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眠レル魔女 1
それから皇は死んだように眠っていた。
大人しく眠っていれば大体のものが5割り増しによく見える。
普段うるさいやつだと尚更である。
ただ普段うるさいやつだからこそ静かに目を閉じられているだけだとだんだん不気味に思えてきて殺意すら湧いてくるのだが
額に触れると尋常ではないほど熱を持っていて、
本当に死んでしまうのではないかと恐怖してしまうのだ。
最初は殺してやろうと意気込んでいたくせに、どうしてこんな気持ちになるのだろう。
これが情ってやつなのだろうか。
魔女の看病のやり方など知るわけもなく、水で絞ったタオルを額の上に乗せ続ける事を延々と繰り返し続けながらも
答えのない迷路に嫌気がさして、
涼しげな寝顔にやはり殺意が生まれるのであった。
「ごしゅーさまぁ...」
「...何?飯なら冷蔵庫に入ってるから適当に食べれば」
「いえ、そうじゃなくってえ....」
シロエの声を聞き流しながらも月人は彼の体温で暖められたタオルを再び水の入った洗面器に漬け込んだ。
ぴょこんとベッドの上に乗る猫は、不安げに目を細める。
「ちょっとは休んだほうがいいっぽいですよう?」
「は?別に平気だし」
「目の下のクマやばいですよう...せっかくのイケメンが台無しっぽい」
珍しく下手に出てきたシロエだったが月人は苦笑して彼を避け皇の額にタオルを設置した。
「平気だって言ってるだろ。俺吸血鬼だし。」
皇は穏やかな寝息を立てながら、一向に目を覚ます気配もなかったが
気付いたら冷たくなってしまっているような
もしくは熱が上がりすぎて蒸発して何処かに消えてしまうような
そんな気がして目を離すことが出来ないのだった。
眠気も疲れも全く感じないし、それどころかどれくらいそうしているのか時間感覚も曖昧だった。
なんだか彼が倒れたのも魔女の集団が襲ってきたのも1時間くらい前のような気がするし。
「死んじゃいますよう!」
シロエが叫び、月人は膝の上の両手を握りしめた。
「死ぬ?
死ぬわけないだろ...俺は吸血鬼だし..こいつは魔女だし....こんなことくらいで死ぬわけない...」
ぐるぐると様々な光景が頭の中で浮かび続け、
その中心には皇がいた。
そのムカつく顔と今目の前にいる死人のような顔が重なって月人は何か悪いエネルギーに押し潰されそうになった。
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