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眠レル魔女 2

「死ぬわけ、ないだろっっ!!!」 思わず叫んでしまうと、シロエはびっくりしたように目を皿のように丸くしていた。 そんな素っ頓狂な表情がぼやけて、ぱたぱたと布団の上に雫が零れ落ちた。 一体何をしていると言うのだろう。 月人はおかしくなって思わず笑ってしまった。 忌々しい皇は寝こけているのだからさっさと逃げればいいのに、 何を丁寧に看病なんぞしてやっているんだか。 「..はは..バカだな俺....」 頬は濡れ続け、どれだけ拭っても溢れてきてしまう。 シロエは静かにニャアと呟いて、 月人の膝の上に乗るとじっと目を閉じて大人しくなってしまった。 猫のふりなんかしやがって。 月人はボロボロ泣きながら皇の寝顔を見つめた。 長い睫毛がさらさらと揺れる端正な顔立ちは、悪態もつかずニヤニヤと妙に腹がたつ笑い方もせず 手を触れればヒビが入ってしまいそうに、遠くに行ってしまいそうだった。 「...起きろよ皇....ただ疲れただけなんだろ..? こんな、わけわかんないまま...俺置いてどっかに行くなよ... 勝手に行くなよ...!ばか....!」 どの思い出も腹が立ってロクでもないものばかりなのに、フラッシュバックする彼の笑顔には何故だか胸が締め付けられて、切なかった。 虫ケラだとか、童貞だとか、散々バカにするくせに バイトしろだとか、餌にしろだとか、偉そうに言うくせに。 ...どうして。 時々、とても愛おしそうに。 「ばか....皇...」

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