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魔女堕チノ時間 4

「で、辞めようかと思うんだがその前に ...お前俺に言う事あるんじゃねえの?」 「...言う事?」 急に真面目そうな顔で皇はそう聞いてきたが 月人にはこれといって思いつく事もない。 じっと見つめられた瞳にまた吸い込まれそうになるのだけれど 逸らすこともできずに、しかし何も思いつかず首をひねった。 「ありがとう?」 「何に対して」 「...わからんけどなんとなく」 「はー...ああそうですか..」 皇はため息を零し、組んでいた腕を解いてそっと眼鏡を外した。 もしかしてこの場で魔女をやめようと言うのだろうか。 「さてと...魔女堕ちにも色々方法はあんだけど.. とりあえず手っ取り早くて一番簡単で 今ここでできる方法で辞めようかと思う」 「簡単な方法...?」 「他種族と交わること」 「.........。」 月人はその言葉の意味を頭の何処かで理解していたのだが それをよしとするのも本当にその意味なのか?と協議するのにも莫大な時間を要しそうであった。 しかしこのベッドで向かい合わされている状況が裏付けになりそうな気がして、思わず降りようかと腰を上げる。 「.......どういうこと?」 「だーからぁ、サクッとセックスすりゃー辞めれんだよ」 ハッキリと言い切られ月人は白眼になりそうだったがすぐに落ち着きを取り戻す努力をした。 こんな突拍子も無いことを言い出すのは今に始まったことではないではないか。 それにここで取り乱せばなんだかとても格好悪い気がしたのだ。 しかし確認せねばならない事項がある。 「......だ....誰と...」 「お前が言い出したんだからお前が責任取れよ」 「俺と!?本気で言ってんのかお前!!!」 「当たり前だろ…冗談でこんなこと言いたくねえわ」 皇は頭を掻きながら面倒臭そうに呟いた。 月人はパニックだった。 無理だしあり得ないと思うし それなのに、そんなことを言い出した皇は一体どういう心境だと言うのだろう。 ベッドから降りる事も出来ないほどパニックで硬直していた月人を他所に 皇はどこからともなく大人の夜グッズをベッドに投げていく。 「まあ俺はお前が解放してくれんなら 別にこんな事しなくたっていいんだけどな 決めるのはお前だよ、月人くん 俺はお前以外とする気ないから」 眼鏡を外した皇の目はより一層引き込まれてしまう。 鋭く光るその瞳にじっと見つめられ、月人は唇を噛んだ。 今まではこいつに脅されたり無理矢理にさせられてきたが 今度ばかりは違う。 自分のわがままがこんな事になってしまうとは..。 ...解放、すればいい話。 主人と餌の関係で無くなってもここに住むことはできるだろうし皇もいつもと変わらないだろう。 それでも何故か月人は放してやりたく無いのだった。 繋がりが欲しい。 初めてそんな事を思ったのだ。

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