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魔女堕チノ時間 10
何も言えずに見つめ合っていると、やがて彼の白い胸から光の粒のようなものがふわふわと浮かび始めた。
「...わ」
月人は思わず身体を起こした。
皇の体から次々に、蛍のような柔らかな光の粒が天井へと登っていき
やがて天井を抜けて行く。
彼はそれをぼーっと見上げていた。
「ああ....魔女じゃなくなるんだな、俺」
ぼんやりと呟く皇を見下ろす。
光の中の彼はどこか寂しそうな顔をしていたが、安堵しているようにも見えた。
この光は皇の魔力、なのだろうか。
...なんて綺麗なんだろう。
こんなに美しいものを身体の中に飼っていたというのか。
それとも皇だから?
光に包まれているような彼の頬を撫で、口付けた。
「綺麗だ」
例えこの光が彼の体から全部抜けてしまったとしても。
この光を閉じ込めていた彼の瞳の輝きが失われることはないのだろう。
「..そりゃ、どーも..」
それでも彼を作ってきたものだからか愛おしく感じてしまって
月人は光に口付けるように彼の唇にキスを落とし続けた。
そうこうしているとどういうわけだか
未だ彼の体内にあった自身が熱を持ち始め
皇は呆れたように眉を寄せた。
「....月人くんのえっち」
「...うるさい」
皇はぎゅっとまた首に抱きついてきて、
月人も抱きしめ返し、また口付けた。
ふわふわと登る光の中で、長い時よりも長い瞬間
2人で一緒に、いた。
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