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赤く、花のような殺人鬼 3
目を覚ますと、身体中が痛くて、熱くて、最悪の気分だった。
視界がじわりと滲み、ツツジは吐きそうになりながら浅い呼吸を繰り返す。
俺って死んじゃったのかな、てことはここは地獄?
そうだとしたら結構嫌だなぁ、と呑気に考えながら
ツツジは灰色の天井を見上げ、全く力の入らない身体を持て余していた。
「懲りたか?」
視界に男の顔が入って来た。
ツツジはその顔を呆然と見上げながら、何が懲りたか、なのか分からず返事を返せなかった。
「散々人を殺しておきながら自分は助かりたい、か
全く、とんでもない下衆野郎だな」
訳も分からず男の罵声を受け止めるしかない。
「だがお前みたいな下衆野郎も役に立つ事があるらしい。」
「…え…」
「いいか?この国の南部はほとんど山だ。
それは領土の3分の1を有している。
その山の持ち主はたった1人の男だ。
お前も知っているだろう?」
ツツジは何を言われているのかさっぱりわからず
そんなことより身体が痛すぎて顔を顰めてしまう。
「その男は偏屈で自分の領土から出ようともしない
だが国の中枢を束ねる方々も恐れているのは分かるな。
その男がとんでもない力を持っているからだ
今まで強引に奪おうとしても返り討ちにあっている。
誰も手出しができない、その山が欲しくても。
上の方々は何年も画策しておられ、様々な作戦を実行してこられたが全て惨敗した。
故にここ数年は友交な関係を築こうと動いておられたのだ。」
男の長い話にツツジは1ミリも理解できず口を尖らせる。
「そこでお前に白羽の矢がたったというわけだ。
お前がド派手に殺し回り、お前を崇拝する輩がカルト教団を立ち上げたせいで
どうやら上の方々にまで噂がいったらしい」
急に自分の話になり、ツツジは尖らせていた口を引っ込め苦笑した。
自分の話だが自分の話ではないように聞こえるからだ。
「お前に慈悲がかかった。
これは国からの極秘任務だ。いいな?
これに成功すれば火炙りは免れられる」
男の言葉にツツジは足りない頭で必死に考えた。
「火炙り、“は”…?」
「まあ恐らく斬首だな。
早く終わらせられたら拷問も免れられるよう口添えはしてやる」
「死ぬのは確定…かぁ」
「当たり前だ。苦しまずに死ねるだけありがたいと思え」
いずれにせよ運命は決まっているらしい。
「にんむ…って?」
断片的に拾ったワードを呟くと男は頷いた。
「つまり、だ。
今まで友交な関係を築いて来たお陰で向こうにも幾らか隙がある。
その隙を狙いたいというわけだ。」
「スキ…」
「国から奴に贈り物をする予定があってな
本来ならばお抱えの暗殺者が行く予定ではあったが、
これまでのことがある。
相手も残虐な男だ、お前が刺客だとバレればただではすまんだろうな。
拷問でもされ殺され獣の餌にでもなるだろう。
国の貴重な財産をやすやすと失うわけにはいかんからな。
お前のような腕だけはいい犯罪者がうってつけというわけだ。
向こうは山に篭りきりで下界の噂など知らんからそれも好都合」
再び小難しい話になりツツジは口を尖らせた。
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