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ひとのかたちをしたやさしさ 3
「何をしている?」
子どもに見守れながら夢中で貪り食べていると、
開きっぱなしの扉からまた誰かが入ってきた。
「ん“っ…!?」
その姿を見てツツジは思わず静止した。
鋭い眼差し、無造作に掻きあげられた黒髪、顔の下半分を覆う髭と大きな身体。
一瞬で気を失う直前の記憶が戻ってきて、ツツジは思わずパンを喉に詰まらせ咽せた。
「なんという格好で…お前…」
服がはだけているのも気にせず足を投げ出し、半分寝かけたような状態でカゴを抱えているツツジに
男は呆れたようにため息を溢した。
「…っ、えっと…どうも」
ようやく咽せ終わったツツジはとりあえず頭を小さく下げておいた。
男はあまり目を合わせようとせず、こちらに近寄ってくるとツツジを抱え上げベッドへと運んでくれた。
「どう…どうも…」
ツツジはお礼を言いながらも食べかけていたパンを口に詰める。
「生命力だけはあるようだな」
すでに空っぽになっていたカゴを取り上げられ、ツツジは苦笑した。
テーブルの上からカップを取り、ポットから何かを注いでいる後ろ姿を見つめながら
この馬の擬人化みたいな人に助けられた、という記憶を取り戻した。
「…名前は」
こちらに再び戻ってきた男はカップを差し出しながら聞いてくる。
大きな掌からカップをおずおずと受け取った。
「ツツジ…です…」
「お前を呼んだのは、そこの蜂蜜の扉開け係が必要だったからだ」
「扉開け係…?」
「国が勝手に要素を付け足しただけで、それ以上は望んでいない」
男はそう言い、投げ出されたツツジの足を隠すように布団を掛ける。
ツツジはまた難しい言葉が素通りしていくのを感じながら、カップの中の温かいお茶を啜った。
空腹が幾分か満たされたおかげかそういえば何か任務を与えられていたことを思い出し、ツツジはこちらに背を向けて食器を弄っている背中を見つめた。
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