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ひとのかたちをしたやさしさ 4

「おじさんは…えっと、領主様?」 「おじ…」 「ここって山の上の城、で合ってる?」 「…そうだ。」 男は短く返事を返し、次は匙を持ってやってくる。 怪しい色の液体が乗せられていた。 「痛み止めだ。飲め」 匙を差し出され、ツツジはおとなしく口を開いた。 独特の味わいの液体を顔を顰めながら飲み下し、お茶で口直しをする。 男はテーブルを運んできて、ツツジの手が届くようにベッドの隣に置いた。 「何故そう平然としていられるかはわからんが、 お前は足が折れている。 怪我が治るまでは食事は運んできてやる。 あまりウロウロするな。いいな」 「…うん…」 ツツジはおとなしく頷いた。 男は恐ろしい顔をしてこちらを睨んでいて まるで今から食べられるのではと思えるほどだったが、 それ以上は何も言わず空になったカゴとトレーを持つと足早に歩いていこうとする。 ツツジは思わず手を伸ばし、彼の身につけた黒いローブを掴んだ。 「あ、あのおじさん」 「!?」 「あの、助けてくれて、ありがと…」 ツツジが怖々と礼をいうと、男は何も言わずローブを引っ張り無理矢理ツツジの手から逃れると バタンと扉を閉めさっさと行ってしまった。 一瞬部屋はシーンとなりツツジは肩を竦めて、その様子を見守っていた子どもを振り返った。 「あのおじさんなんて名前だっけ?」 小声で聞くが、子どもは首を傾げる。 次の瞬間再び扉が開き、男の腕だけが部屋に入ってきた。 「蜂蜜は自分で扉を開けられん。ここは閉めるな」 男は子どもを指差しながらそう言い残し、今度こそ去っていってしまった。 ツツジはカップの中に残っていたお茶を飲み干してしまうと、はぁ、と息を吐いた。 「自分で閉めたんじゃん?」 ヘラッと笑いながらも一先ず身の安全を確保された喜びにホッと胸を撫で下ろし、 ツツジは幾分か幸せな気持ちで二杯目のお茶を頂く事にするのだった。

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