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ひとのかたちをしたやさしさ 7
痛めつけられる一方でいい加減体力の回復を図りたいと訴える身体に支配され
ツツジは暫く泥のように眠る日々を送っていた。
焦って仕事を探したり誰かに媚びへつらって靴を舐めなくても
寝て起きたら勝手に食事がベッドの横に置かれているし
痛み止めという独特な味の薬さえ我慢すれば、あとはひたすら食べて寝るという
ぐーたらした生活を送れている。
今までの凄惨な日々が嘘のように夢のような生活だった。
そんな生活をしていたおかげか、
部屋の中を壁伝いに動けるくらいには回復した。
あまりウロウロするなと忠告されてはいるものの
流石に寝てばかりだと腰が痛くなってしまうし、
何より暇なので歩行練習も兼ねて部屋の中を歩き回り
大きな窓から外を眺めたりしていた。
山の上にあるおかげか、窓の外の眺めは最高だった。
生い茂った緑が広く遠くまで見えていて、
すぐ下には屋敷の敷地内なのであろう庭が見えた。
綺麗に整えられた庭はさまざまな花が植っていて、時々あの子どもが走り回ったり
あのボイラースーツの青年が何か作業をしている姿が見えたりした。
あれ以来蜂蜜は頻繁に部屋に来て、
ただニコニコしてこちらを見守ってくれたりはするものの
青年とは会っていないし、領主も顔を合わせると話しかける暇もなくすぐ去っていってしまうので
だんだん言葉を忘れそうではあった。
しかしツツジは体力の回復と共にそもそもここへ来た目的をようやく思い出し、どうにかしなければなぁと思いながらも
この最高の生活についつい甘えてしまうのだった。
やらなければ火炙り、しくじれば獣の餌、成功すれば斬首。
そんな命運が決まっているからこそ余計に。
「でもまずは風呂に入りたいよなぁ」
領主とヤる、そんな任務を遂行するにはまずは身綺麗にしておきたいものだがそれ以前の問題であった。
領主がボウルに湯を張って持ってきてくれるのでそれで身体を拭くことはできるが
湯船に浸かるのはまだ難しそうだ。
部屋には一応洗面台やトイレは備え付けられているが、バスタブやシャワーは別の場所にあるようだ。
ツツジは洗面台まで壁を伝って歩いて行き、鏡を覗き込んだ。
髪の毛はボサボサだし、化粧が剥がれてしまったせいで火傷を負っているおでこや首は隠せていない。
体はどうにでも誤魔化せるが、せめて顔付近の傷はどうにかしたいものだ。
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