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心の声が聞けたなら 2
一晩泣いてしまったせいか、瞼が重かった。
いつもより遅い時間に目が覚めたがあまり寝た気もしない。
いつものようにベッドの横のテーブルには食事と薬が用意されていた。
ツツジはそれを見てまた泣きそうになり、
食事に背を向けるようにしてベッドに再び横になった。
昨日からどうも少し自分の情緒がおかしいらしい。
贅沢な生活をしすぎたのかもしれない。
確かにツツジはあまり過去を振り返らないようにはしていたが、
自分のこれまでが全てなかったことになるわけではない。
死刑は免れられないし、自分が人を殺してしまっているかもしれないという事柄は消えたりはしないのだ。
ツツジはそうではないと思いたかったが、
そうかもしれないと少しくらいは思っていた。
死刑になるくらいには、どうにも“普通のこと”ではないらしい、と。
これ以上人を殺したくはない。
そのために長くここにいてはいけない。
ツツジはそう思ってしまっていた。
開きっぱなしの扉から蜂蜜が入ってきた。
横になっているツツジと目が合い、蜂蜜は微笑みながらベッドに近寄ってくる。
ベッドに頬杖をつくように顔を近付けられ、ツツジはどうしていいかわからず口を尖らせた。
蜂蜜は不思議そうに首を傾け、ツツジを指差した。
「なに?」
ツツジが聞くと、蜂蜜は自分の瞼に触れ、また首を傾げた。
「顔ひどい?やっちゃったなぁ」
思わず苦笑する。
ただでさえ、触れる気はない、とハッキリ言われてしまったというのに
泣いて目を腫らしたりなんかしてますますブスになってしまったら
任務遂行が遠くなってしまう。
「ねえ、おじさんって何系が好みとか知ってる?
やっぱり可愛い系かな…?
それとも本当は巨乳じゃなきゃ無理!とかだったりするのかな」
蜂蜜に聞いてもしょうがないことを呟いてしまうと、案の定不思議そうに首を傾けていた。
しかしヤるしかないのだ。
早く任務を終えてここを離れることが、自分にできる精一杯だ。
寝返りを打つと蜂蜜もぴょこぴょこと移動してくる。
手をつけていない朝食を発見した蜂蜜はテーブルの上を指差して首を傾げた。
ツツジが無視をすると、蜂蜜はパンを食べるようなジェスチャーをしてくる。
「…はぁ……わかった…食べるよ」
その可愛らしさには敵わない。
ツツジは観念してのろのろと起き出し、テーブルの上に手を伸ばした。
「蜂蜜ちゃんはおじさんの子ども?
あれ、てことはおじさんって結婚してるのかな…」
ツツジはパンを齧りながらも、またベッドに頬杖をつきながらにこにこ微笑んでいる蜂蜜を見下ろした。
「やっぱ巨乳?」
蜂蜜は相変わらず首を傾げるのだった。
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