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心の声が聞けたなら 6

“お前は美しいだろ” そんな言葉を言われたのは生まれて初めてだった。 思わずキスをしてしまったことを後悔しながらもツツジはついついニヤニヤと笑ってしまう。 「ええ〜?そうかなぁ?ちょっとは本当かも?」 自分の顔をこねくり回しながらも優越感にひたすら浸って やがて深いため息をこぼす。 「なんて、そんなわけないよね…」 彼は優しい人だ。 嘘をつくようには見えないが、もしかすると優しいがゆえにお世辞を言ってくれたのかもしれないし そもそもただの聞き間違いかもしれない。 でもキスであんなに顔を真っ赤にして飛び出していってしまうとは。 それとも奥さん一筋だったりするのかもしれない。 だけどそうだとしても、任務は遂行せねばならない。 ツツジは調子に乗る自分を律しながらも独特の味の薬を飲んだ。 例え無理だと思われていたとしても、どうにかしてその気にさせねば。 自分は救いようのない存在で下衆野郎で化け物らしいから さっさとお役に立って死んだほうがいいに決まっている。 今まで気にしたことの無かったはずの、浴びせられた言葉がなぜかどんどん蘇ってくる。 やくたたず、やくびょうがみ、きみがわるい。 ツツジは静かに自分の身の丈を噛み締め小さく笑った。 もう泣いてはいけない。 これ以上顔がブスになることは許されない。 早くしなきゃ。 あんなに自分に優しくしてくれた人間を殺してしまったら それこそ本当の化け物だ。

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