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神の棲まう庭 5
結局無言のまま部屋に帰りつき、ベッドの上に彼を下ろした。
「ありがとうおじさん」
大人しくベッドに座らされたツツジは、別に何事もなかったように微笑んでいる。
何と無くその白い頬に触れたいと思ってしまう。
頬を撫でて、やりたいと。
しかしすぐにその気持ちを打ち消して、
ゼアレスは顔を顰めながら火が弱くなっていた暖炉に向かった。
「おじさんって彼女いない歴=年齢なの?」
「!?」
急にとんできた斜め上の質問にゼアレスは思わず咽せてしまった。
「てなると…童貞?いやまさかそんなことないよね」
「バカ!少しは口を慎め!」
「え、マジで?おじさんモテそうなのに」
「あのなぁ……」
合コンみたいな会話にゼアレスは心底深いため息をついた。
こんなチャラついた内容の話を振ってきた人間が今までいただろうか。
「お前には関係のないことだろうが」
何か別のことをしていないと恥ずかしさで爆発しそうだ。
暖炉に薪をくべることに集中する。
「関係あるよ。俺一応おじさん狙ってる立場だし」
「は…?どういう意味だ?」
「おじさんとしたいなって思ってる人」
不可解な発言にゼアレスは恐々と振り返った。
ツツジはなぜか挙手している。
「し…したい…?」
「したい」
「何を…?」
「何をってそりゃー…その、えっちというか。セックス?」
「………。」
ゼアレスは自分の顔が発火するのかと思うほど血液が沸騰する感覚を覚えた。
それは初めての感覚で、思わず固まって動けなくなる。
目の前の男が何を言っているのか、分かってはいるのだが
わかることを拒否したい脳がゼアレスの心臓に寿命を縮める電気信号を送り始める。
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