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彼方側からの使者 5

カザリという謎の男が屋敷にやってきた。 やけに丁寧な口調と優雅な仕草の男は、どうやってやってきたのかは知らないが 汚れひとつないピカピカのタキシード姿で、靴ですらそうであった。 大荷物を抱えたゼアレスが去ってしまい、ツツジはその男と二人きりにされてしまったが 人見知りとは縁遠いところにいるツツジは、3人以外の人間に会った事が新鮮で彼をじっと観察してしまうのだった。 「わたくしが気になりますか?」 開けっ放しのスーツケースの中を弄っていたカザリだったが、ツツジの視線に気付いたのかこちらににこりと微笑みかけてくる。 「おじさんと友達、なの?」 ツツジが思い付いた疑問を投げかけるとカザリは、友達ですか、と顎の下に指を置いて考えている。 「シュタインガルド様とは古くから親しくさせて頂いております。 ですがわたくしは“化爿”の身ですので、お友達とは恐れ多い」 「けしょー?」 「そうですね。ツツジ様はこの山のことをどれくらいご存知ですか?」 「え…うーん…綺麗だなぁってことくらいかなぁ」 ツツジの間抜けな発言にもカザリはにこにこして頷いた。 「この山はかつて神々の住まう神聖な場所として 人の出入りは禁じられておりました。 神とは“魔女”や”精霊“など人とは異なる存在のことでございます。 主に”魔女“がこの地を治め、元々この山で暮らす精霊や動物たちを守っていたのです。」 魔女というのは古いおとぎ話の中の存在だった。 確かにいたということは知っているが、今はもう残ってはいないと聞く。 魔法と呼ばれる不思議な力を使い、人智を超えた現象を起こし 人々は神と崇めていたのだとか。 「魔女がこの世界を去った後もこの山は大変神聖な場所として崇められていたのでございます。 しかし時代は流れ人々の神への敬意は徐々に薄れていったのです。 この山のこの神聖な力が無ければ人々の住まう場所もまた脅かされるというのに…」 カザリの話は難しかったが、なんとなくこの山はすごいパワースポットであることを理解したツツジであった。 「このような神聖な場所は各地にございます。 我々“化爿”は魔女の使いとしてそのような場所を見守るべく存在しております。 しかし我々に出来ることは限られておりますし、数も少なく、 それに人には人のルールというものがございます。 ですから、シュタインガルド様のような方のお力をお借りしているのです」 「おじさんの?」 「ええ、あの方はこの山を人の侵略などから守ってくださっているのです」 「そうなんだ…」 そんなにすごい人とは思わなかった、とツツジは妙に感心してしまった。 こんなに広くて大きな山を一人で守っているだなんて そりゃやる事がいっぱいで彼女を作る暇がなかったのも頷ける。

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