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魔法の業の深さ 1

「はぁ…またしてもローザ様にお許し頂けませんでした…誠に口惜しや…」 なんでも次の予定があるのだとかで昼前にはカザリは屋敷を出発するようだ。 彼を見送るためにゼアレスは少し一緒に森を歩いた。 知らない間にまた庭師と喧嘩をしたらしい。 「まあローザ様はクールかと思いきや、見えたものに思い悩んでしまうような所がありますから。 そういう所があの方の可愛らしくて目が離せない部分でもあるのですけれどね…」 「お前の事は思うようにいかないから、苦手なのだろう」 「ふふ。わたくしの心を読んでくださればどんなに楽かと思う反面 知られてしまったら羞恥で居た堪れない、という気持ちもあるのですよ。 化爿の身でどなたかに肩入れするなど身の程知らずですからね、内緒ですよ」 カザリは口元に人差し指を当てて微笑んだ。 彼と庭師がどういう関係なのかは知らないが、彼らにも色々あったのだろう。 ゼアレスは自分が口を出すような事ではないと弁えていたが、あの歪んだ性格が形成されてしまうのも分からないでもなかった。 人とは違うモノを持って生まれるというのは、才能やギフトと持て囃されもするが 時としてそれは呪いや枷となり得る。 彼が動植物以外に心を開けない事は寧ろ自然のような気がした。 「シュタインガルド様もツツジ様のことが苦手ですか」 急にブーメランが飛んできて、 ゼアレスは思わず足を止めてしまった。 「…なんとまあ分かりやすい」 「ち、違うぞ…その、あいつは…だな…、 アホすぎるというか、距離感バグというか、…」 ゼアレスがごもごも言っているとカザリは愉快そうに笑っている。 「あなた様がたじたじとは、ふふ、しかしとても良く理解できますよ。 あのお方はとても不思議な方ですね。 確かに“個性持ち”の方は独特の雰囲気をお持ちの方が多いですが、ツツジ様ほど裏表がなく素直な方は珍しい」 「そうなのか…?」 「ええ、まだご自身のお力を受け入れられていないような所があられるようですが… 非常にお辛い経験をされたのでしょうけど、 それすらも歪まずに受け入れていらっしゃるというか」 歪まずに受け入れている、ゼアレスはカザリの言い得て妙な分析がわかる気がした。 ツツジは自己評価が低い割にどこかあっけらかんとしている部分もあり、 異常に前を向くスピードが速いし それなのに繊細で今にも壊れそうで、どう扱って良いかが分からなくなる。

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