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魔法の業の深さ 2
「シュタインガルド様、ローザ様の時もお伝えいたしましたが
“個性持ち”とは生まれながらにして、
人でありながら、人では無い領域にたった一人で立ち続けていらっしゃるのです。
その領域には人間も、我々化爿ですら決して入れません。
寄り添えば寄り添うほど、お辛くなることもありましょう」
カザリの忠告に、一人で泣いているツツジの声が思い出される。
「ですが、“個性持ち”でありながらあんなに素直で純粋な方はほとんど奇跡といっていいでしょう。
あの方がこれから“力”と向き合った時に、
これまでを取り戻すように大きく歪んでしまうことも充分考えられます。
ツツジ様は、まだ“不完全”ですから
それゆえに、近くにいる人間によってきっと大きく変わってしまう。」
近くにいる人間。
それは自分のことかと思うと急に背筋が伸びる思いだった。
「……私に務まるだろうか…」
「さあ、どうでしょう。
無理そうであれば国に返すのも一つの手でしょう。」
「……。」
国に返す、確かに適当に言っただけで元々は不要な存在だった。
寧ろ煩わしくも。
「ですがわたくしは、ゼアレス様であればと信じておりますよ。
余計なプレッシャーをかける訳ではありませんが…
この山の空気に触れるだけでも、きっと国よりは快適でしょうからね。
それにローザ様にとってももしかしたら…、とこれは余計でしたでしょうか」
カザリは肩を竦めて微笑んだ。
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