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魔法の業の深さ 6
「ツツジ?」
「あ、おじさん!」
ツツジは仰向けに寝転がったままの状態で頭を転がし、
部屋の入り口で立ち尽くしている男を捉えると笑顔を浮かべた。
大男は呆れたような顔でこちらへ近寄ってくる。
「お前は本当に行儀が悪いな」
床に寝そべって見上げると余計に巨大に見えて
ツツジは少し面白くなってしまった。
「火傷の薬だ。カザリに調達してもらった
気になるなら塗っておけ」
男は手に持った小瓶を突き出し、こちらに見せてくる。
ツツジは上体を起こし、苦笑した。
「ありがとう…」
本当は火傷のことはバレないようにしろ言われていたのだが
流石に気付かれていたようだ。
「ここに置いておく」
「あ、ちょっと待って…!」
ツツジは勢いで呼び止め、頭の中でまた薄ぺらな引き出しを探った。
「なんだ?用がないなら行くぞ」
「待って待って、えっとあの…ぬ、塗って欲しい!」
「は?」
必死で立ち上がって、
彼に追い付くとテーブルに置かれた瓶を掴んだ。
「これ、塗って?」
「それぐらい自分でできるだろ」
「背中!背中は自分じゃ届かないじゃん?
だからそこだけでも、お願い!ね!?変なことしないから!」
「……。」
ゼアレスは顔を顰めて何か考えているようだったが、やがて渋々了承してくれた。
正直背中に火傷の痕があるのかどうかなど自分でも分かっていなかったが、どうやら勢いで押し切れたようだ。
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