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魔の差す領域 3
「……?」
彼の身体が動き、ゼアレスは思わず撫でていた手を引っ込めた。
うっすらと目を開くと、ツツジはこちらを見上げてくる。
「おじさん…?」
涙で滲んだ赤い瞳は、何が起こったのかわからないと言ったようにどこか不安げだった。
「起きたか…」
「ん……あれ…」
ツツジは自分が泣いていることに気付いたのか
両手で顔を拭い始めた。
「あ。あは…変だよね俺、なんだろうかこれ」
なぜか慌てたようにツツジは言い訳をしながら乱雑に涙を拭い、
ベッドから飛び起きた。
「うわ!夕方だ!俺そんなに寝ちゃってた?」
窓の外のオレンジ色を発見すると、ツツジはまた慌てて叫んだ。
ボサボサの髪の毛をかしかしとさらにボサボサにして、あちゃーと苦笑する。
「なんか汗でベタベタするし…せっかくの新しい服が…」
やはり目が覚めているツツジは騒騒しい。
一人で喋っては落ち込んでいる。
「湯船に浸かるのは火傷が治ってからの方がいいだろうな
シャワーにしておけ」
「え!?いいの!?」
「別に私の許可は要らないだろう。入りたければ入れ」
「え、じゃあ、一緒に入る!?」
「……1人で入れ。」
キラキラした瞳で見つめられ、ゼアレスは思わず壁に顔を向ける。
やっぱり一生眠ったままでもいい気がした。
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