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魔の差す領域 7
ところがツツジは以外に大人しくしていて
ゼアレスの雑務が終わる頃まで彼が喋りかけてくることはなかった。
紙の束を重ねて所定の位置にしまいながら彼の様子を伺うと
タオルを頭から被ったまま暖炉の火をぼうっと見ている姿があった。
あんな大火傷をしておきながら火に近付いて大丈夫なのだろうか。
普通はPTSDにでもなりそうなものだが。
「おじさん」
ツツジは火を見つめたままゼアレスを呼ぶ。
「なんだ」
「……うん、あのさ」
彼の声はどこか元気がないように感じてしまって、
ゼアレスは思わず彼をじっと見つめてしまった。
斜め後ろの位置であるし、タオルと髪で表情はよく見えなかった。
「気持ち悪いの見せちゃってごめんね。
隠せって言われてたの忘れてたんだ。」
ツツジの言葉に、ゼアレスはなんのことかと思考し、
やがて背中の火傷のことだと思い至った。
細かな火傷はちゃんと薬を塗っていれば治っていくだろう。
だがあの背中の火傷はどうやっても痕が残るに違いない。
ゼアレスはどう答えていいのかわからず、
目を逸らしたり自分の両手を握りしめたりした。
「俺本当忘れっぽくて…ダメだなぁ」
ツツジは俯いて掠れた声でそう呟き、再びタオルで髪を拭き始めた。
ゼアレスは、その小さな背中を見ていると
彼の口からではない彼の情報に振り回され、
彼に距離を感じている自分が腹ただしく思えて頭を掻きながら
椅子から立ち上がった。
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