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言えない理由 2
「それでさ、隣見たらね壁にナメクジがめちゃくちゃ張り付いててさぁ
俺ナメクジと混浴しちゃってたわけ」
気色の悪い話をしていると梯子を持った庭師がやってきた。
「あ、お兄さ〜ん!」
ツツジは用もなく手を振った。
庭師はこちらを見もせずに様々な道具が固めてある場所に梯子を下ろしている。
無視をされてしまったがツツジは別にそんな事には慣れているため気にも留めず、作業に没頭する。
「邪魔そう」
少しばかり頑固な汚れと戦っている間にいつの間にか庭師がこちらを覗き込んでいて
ツツジは顔を上げた。
「え?」
「髪」
庭師は自分の襟足あたりを指さした。
ああ、とツツジは笑った。
「昨日洗ったからふわふわになったんだけど
ちょっとなりすぎたかな?」
元々癖っ毛で、長く伸ばせば少々まともになるものの
短くなってしまったせいで余計に跳ね回ってしまうのだった。
庭師は何か考えるようにこちらをじっと見ると、
やがて何も言わずに去って行ってしまった。
「…あは、変だと思われちゃったかな」
ツツジは少し恥ずかしくなりながらも苦笑した。
確かに珍しい色でもあるし、髪が変だとはよく言われたものだが
言われすぎたため最早気にも留めなくなっていた。
「蜂蜜ちゃんは髪の毛綺麗だもんね。真っ直ぐでサラサラ
俺もちょっとストパーとかかけてみたいかも?」
冗談を言うが蜂蜜は不思議そうな顔をしている。
黄緑色の髪の毛はまるで木漏れ日のように透明感があり、絹のようにしなやかだった。
本当は触ってみたいが、触ると溶けると言う言葉はいくら忘れっぽいツツジであっても衝撃的すぎて脳に刻み込まれている。
「俺も頑張っていつもこんくらいは伸ばそうとしてるんだけどね
目障りだって言われて切られたり、売ってって言われたから切っちゃったりでさー
酷い時なんか坊主にされそうになったからね?」
これまでの経験をベラベラ喋りながら、
ツツジは不意に違和感に襲われ急に口を噤む。
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