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炊事場の悪霊 1
どうにか無理矢理襲ってしまったとはいえ
あれは果たして「ヤった」うちに入るのだろうか。
「うーんやっぱり最後までせなあかんよな?」
今日はしとしとと雨が降っていた。
ツツジは窓の外を見ながらも首を捻って考えていた。
国に戻るのは結構大変だしグレーな案件で良しとせず、もうこれは絶対に大丈夫、ぐらいの確証を得てから帰ったほうが得策である。
そうなれば善は急げである。
ツツジはゼアレスを探すために部屋を飛び出した。
庭師からもらった杖のおかげでかなり移動が楽になった。
壁を使うよりも負担が軽い。
「おじさーん?」
ゼアレスの部屋には誰もおらず、ツツジは仕方なくまた移動した。
階段は少し苦労するが以前よりは幾分かマシである。
雨のせいか廊下はいつもよりもひんやりと冷たい。
バスルームや以前カザリが来ていた大広間も覗くが彼の姿はなかった。
「うーん…どこ行っちゃったんだろう」
まさかこんな雨の中外で活動しているのだろうか。
ツツジは大広間の中を突っ切り、奥の扉を開いた。
まだ行ったことのない未知の領域である。
扉の向こうはまた廊下になっていて、片方は壁がなく直接庭に出れるようだったが
以前蜂蜜に案内された通路とはまた別のようだ。
遠くに馬小屋も見える。
「雨の中出て行ったら流石に怒られちゃうかなぁ」
廊下の柱の先にも少し屋根がかかっていて、廊下とは違うタイルが張ってありガーデンテーブルや椅子がいくつか置かれていた。
ツツジは屋根のあるギリギリの所まで行ってみて様子を伺ったが、人の気配はなかった。
とりあえず通路に戻り散策する。
壁には綺麗な花の絵が描かれていたりして
晴れていたらもっと綺麗な通路なのだろうな、と思った。
やがて大きな扉の前に差し掛かった。
しかしその扉は異様、であった。
両開きの大きな扉には”KEEP OUT“と書かれた黄色いテープが張り巡り、禍々しいオーラを放っている。
「なんかここだけ世界観違うくない…?」
ツツジは苦笑した。
廊下はそこで突き当たりになっている。
ふ、とその扉の横に小さな小窓があるのを見つけツツジはその前に立った。
台のようなものが付いていて、スライド式の戸が閉まっていた。
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