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炊事場の悪霊 5
結局ゼアレスは見つからず、外に出ることもできないため
屋敷をひたすらウロウロして冒険した。
鍵がかかっていない部屋を全て開けてみたり、乱雑に置かれた謎の調度品を眺めたりした。
確かに大きな屋敷ではあるのだが、
住民も少ないためか全体的に閑散としていた。
部屋のほとんどは使われていないようで、家具は乱雑に置かれていることが多かったし
ツツジの頭の中にイメージしてあった大金持ちの家のように、あまりギラギラ飾られてもいない。
しかし部屋も置いてあるものもわりかし綺麗にしてあって、掃除はよく行き届いているようだ。
結局大広間に戻ってきたツツジは、あちらこちらと法則性もなくただ置いてあっただけの家具を引っ張って集めてきて
大きなテーブルの周りに同じ椅子を揃えたり
暖炉の周りにソファや小さな机を並べてみたりして
少し人が生活していそうな空間を作ってみるどうぶつの森ごっこをして遊んでいた。
満足のいく配置ができると、大きくて立派な暖炉に火を付けてみた。
綺麗に掃除されていてあまり使われていないようだったが一応いつでも使えるように薪やマッチは雑に積んであったのだ。
その暖炉の前に先程自分で設置したソファへ寝そべって、高い天井を見上げる。
中央に大きなシャンデリアがあり、それを取り囲むようにして天井の模様が広がっていた。
四方にもそれよりも少し小さなシャンデリアがあり、かつてここでは舞踏会的なものが開かれたりしていたのだろうかと想像する。
そうでなかったとしてもそれを想定して作られはしたのだろう。
今はツツジがたった1人で存在していて、不思議なものだと思う。
外は雨降りの灰色で時間はよくわからないが、
腹時計的にはそろそろ夕食の時間だろう。
ツツジは遊び疲れた身体を休めながら、寝返りを打って暖炉の方へ顔を向けた。
ご自身の心をよく見つめることです。
ゆらゆらと燃える炎を眺めていると、不意にこの部屋でカザリに言われた言葉を思い出した。
俺の心?
と、ツツジは思わず自分の胸に手を置く。
心って、なんだろう。
自分がどう思っているか、どう感じているか、
ツツジはよくわかっているつもりだったが
そう言われてみると疑問に思えてしまう。
自分がどうしたいのか?
だってそんなの、
知ったって、叶うわけない。
本当はわかっているくせに。
”自分じゃない誰か“が
頭の中で叫んだ気がした。
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