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向き合うべきこと 7

「いいのか?本物の化け物になるぞ そんなのあの男が知ったらどう思うかな。 さぞかし気味悪がられるだろうなぁ」 ツツジは微笑んだまま、その美しい存在にそっと口付けた。 そしてそのまま首に置いた手に力を込め、その身体を押し倒した。 真っ赤な血溜まりに広がる赤い髪。 その血に沈めるように両手に力を込めた。 「…そうだね。君の言うとおりだよ。 俺は理解ってた。 でも受け入れたら、きっと何もかも壊れてしまうから 見ないようにしていた。忘れようとした」 自分の身体の内側、油断をすれば食い破って出てこようとするその冷たい闇。 それに身体を奪われぬように、心を壊されないようにしてきた。 それでどれだけ人が死のうとも。 「自分が壊れないために人の命を奪ってきたというなら 俺はきっと本当に、本物の殺人鬼なんだろうね」 ツツジは苦笑してその細い首を絞めた。 苦しそうに暴れる自分自身の姿を、目に焼き付けながら 赤い血溜まりの中に沈めていく。 身体が血の海に飲み込まれて、動かなくなるまで力を込め続けた 人とは違う領域にいながら、それでも自分を誤魔化し続けてきたのは きっと誰かを愛したかったからだ。 暴れる冷たい身体はやがて動かなくなり、ツツジはようやく手を離した。 ガタガタと身体が震える。 自分の手で、命を奪う感覚。 こんなに恐ろしいものはない。 それをずっと、自分は封じ込めてきたのだ。 ツツジは血に濡れた手で自分の顔を覆った。 自分の内側から、冷たい風が溢れ出した。 まるで槍のような鋭い風に全てがバラバラになっていくようだった。 「……もういい……もう…たくさんだ……もう疲れた…」 小さく笑う。 冷たくて寒くて、苦しくて、痛い。 誰もいない領域に飲み込まれて、身体がバラバラになって 壊れてしまいそうだ。 誰かを愛したかった。 そして、愛されたかった。 誰かに、助けて欲しかった。 横たわり、本物の人形のように硬直したその白い手を握りしめて その身体の上に倒れこんだ。 血の海に飲まれていくのを感じながら目を閉じた。

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