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夜明け前が一番暗い 6

なんにも要らない。 最後の最後まで罪を重ねていく俺を許してほしい。 日がまだ昇り切る前に、 ツツジは隣で眠る男の頭にキスをして そっとベッドから降り立った。 外はひんやりと冷たくまだ暗かった。 馬小屋に行くと、他の馬が寝ている中 まるで待っていたかのようにパースは目を覚ましていて ツツジの姿を見ては、お辞儀をするように頭を下げた。 この子にも少し申し訳ないことをしてしまう。 ツツジはその頭を抱き締めるようにして撫でた。 「俺を…連れていってくれる?」 馬は何も答えなかったが、代わりにツツジにピッタリと額をくっつけてくれた。 パースと共に屋敷の裏手から正面へと周り、寝静まる大きな屋敷を振り返った。 もう2度とここに来ることはないだろう。 その期間はとても短かったかもしれない、だけれど本当に夢のような日々だった。 毎日毎日ひたすら幸せだった。 ツツジは小さく口を歪めて、パースと共に屋敷に背を向けた。 その時、ぐい、と服を掴まれ思わず下を見る。 「蜂蜜…ちゃん…?」 黄緑色の髪の子どもが、必死な眼差しでこちらを見つめている。 触ってはいけない、という言葉を思い出し ツツジは思わず服を引いて彼の手から逃れた。 「ごめん…でも俺はもういかなきゃ」 蜂蜜にそう言い聞かせるが、彼は必死に首を横に振った。 「ごめんね……」 ツツジが謝ると蜂蜜はこちらに飛び込んできて、 ツツジの腹あたりに抱きついてくる。 その瞬間、彼の身体からまるで氷が溶けるように 白い光の粒が溢れ出した。 ツツジは瞬間的にまずいと感じすぐに彼を引き剥がした。 蜂蜜は泣き出しそうな顔でまた首を横に振った。 「……っ、だめ、なんだ、俺はここにいられない」 蜂蜜の身体はツツジに触れた部分が透明になっているようだった。 ツツジはまたしても誰かを傷付けてしまった自分に唇を噛み 彼を振り切ってパースに跨った。 「ごめんね、ごめんね……、蜂蜜ちゃん」 それだけを言い残し、パースの腹を蹴った。 パースは勢いよく走り出し、 ツツジは振り返りたい衝動を抑え手綱を握りしめたまま前を向き続けた。

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