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繋ぎ止める、 2
「シュタインガルド卿…!?何故ここへ?」
めかし込んだ男が顔を引き攣らせながらゼアレスを睨む。
周りの兵士たちは皆剣を抜き始めた。
死刑囚を庇うなど、相当な罪だ。
この場で斬り殺されても不思議ではない。
「おじ、さん…」
「大丈夫だ」
ゼアレスはいつにも増して堂々として男達に向き合っていた。
大きな剣を背負ったその男らしい背中には惚れ直す所存だが、四方からたくさんの兵達が集まってくる。
「彼が人間とは違った存在だと充分分かっただろう。
人の法では裁けない。」
「人間じゃない化け物だからこそ生かしてはおけんのが分からぬのか?
そいつは30人以上も殺した!充分に駆除に値する害虫だ!」
「死刑囚を使って私を殺させようとした奴らの台詞とは思えんな」
ゼアレスの言葉に男は一瞬、ぐ、と怯んだが
すぐに不敵な笑みを浮かべる。
「化け物の肩を持つとは実に残念だ、シュタインガルド卿
やはり化け物同士通じ合うところがあるらしい」
男は捨て台詞を吐くと、すっと後ろに下がっていき
たくさんの兵達が2人と1匹に剣を向けてくる。
「化け物か…そうだな…私は今相当に怒っている。
下手にかかると殺してしまうかもしれんぞ
覚悟してかかってこい」
その気迫だけで何名かは怯えすくんで尻餅をついていた。
だが数があるからと意気込んだ兵達はゼアレスに一斉に飛びかかる。
ゼアレスは背中の剣を抜き群がる男達を次々と薙ぎ倒して行く。
大きな身体で俊敏に動く様は、獣のように強大で恐ろしく
その迫力に恐れをなし剣を捨てて逃げるものもいた。
ゼアレスの隙を見てツツジに斬りかかってくる者もいたが、
優秀な馬が蹴り倒し、ツツジは二頭の黒い獣に守られ
日が昇る頃にはツツジ達の前にはもう誰も立っていなかった。
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