128 / 162

繋ぎ止める、 4

格子の一部がベコベコに歪んでいて、馬1匹が通れそうな空間ができていた。 そこを通ると、人影が近付いてくる。 「殺人鬼」 声をかけられツツジはそちらを見下ろした。 「あ、刑務所の……」 前回の逮捕から世話になっていた男だった。 男はため息をつきながら、やってくれたな、と口を歪める。 「行きやしないよ、見ての通り下界だけで精一杯なんだ」 男は肩を竦めながら苦笑した。 恐らくは先程の脅しに対しての言葉だろう。 「お前は本当に不思議な奴だ。 間違いなく人殺しの下衆野郎のくせに、まるでガキみたいで調子が狂う。 だから厄介なんだ。」 男は貶したいのかなんなのかはわからなかったが、 ツツジは気にかけてもらえているのだと分かり何だか悲しくなった。 「うん…ごめんなさい…」 「また死に損ねたな。お前みたいな化け物は我々の手には負えん。 二度と来るなよ」 「……ん…ありがとう……」 男はどこかホッとしたように笑っていた。 ツツジはその顔を見て、何かが切れたように意識を失った。

ともだちにシェアしよう!