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繋ぎ止める、 5

腕の中で意識を失ってしまったツツジを支えながら、 ゼアレスはなんとも言えない気持ちのまま馬を走らせた。 本当は早く治療してやりたいが、街で自分たちは受け入れてもらえないだろうことはわかっていた。 山に入り暫く走り、 比較的平坦な場所と綺麗な水辺の辺りで馬を止めた。 着ていたローブにツツジを包み、地面の草の上に横たえ 馬具に括り付けていた荷物の中から簡易的な医療道具を取り出す。 あらかた予想はしていたのだが、彼の状態は想像以上に酷い。 死に至らしめられるものではないにせよ、 それゆえに地獄のような状態だと言える。 それが拷問というものではあるのだが つくづく人は残酷だと思う。 とにかく一通りできることをやり終え、 その顔を見下ろしては小さく息を吐き出した。 少し色々な事がありすぎた。 頭の整理をしなければキャパオーバーで逆に何も考えられなくなってしまいそうだ。 ボロボロのツツジの姿を見たときは怒りで我を忘れそうになり それでも、ツツジのあの何もかもを受け入れて 寧ろ安心したような表情に一瞬躊躇してしまった自分がいた。 想像も付かないような彼の重い罪は、到底許されることではないだろう。 それでも身勝手なゼアレスは、もう充分背負っているではないかと思えて仕方がないのだ。 あれだけの炎に巻かれる中彼を守るようにして取り巻いていた風。 1度目の時だってそうだ、結局彼は傷を負ったまま生かされ ここへ来る途中でも身体がめちゃくちゃになっても生きることを強要されている。 彼のこれまでの全てはわからない。 だけれど意図せずに命を奪い続けてしまう身体で、わけもわからず放り出されれば 誰だって“死んだ方がマシだ”と思うのではないか? また死に損ねたな、と言われていた。 死ぬことすら許されず、生きながら苦しみ続けるのは地獄も同じなのかもしれない。 ローブに包まれ、震えながら眠っているツツジの頭をそっと撫でた。 鎖で繋がれ何度も鞭や棒で叩かれ、針で足や腕を貫かれ 殴られ蹴り回され、あんなに大勢の人間の目に晒され きっと人にかける言葉ではない罵声も浴びせられたに違いない。 その姿を思うと怒りが湧き起こり、 同時に虚しさや悲しさも込み上げて来て ゼアレスは涙を溢れさせた。 本当にこれでよかったのか?と。 「こんなのは……傲慢だ……」

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