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化け物同士 2

庭師の言葉にツツジは目を見張った。 思わず芝生の上を這うようにして彼に近付いた。 「そうなの!?本当に!?」 「ああ…。僕らみたいのは“個性持ち”って呼ばれてて 数千万人に1人しかいないんだと」 ツツジが興奮して風を巻き起こしてしまうと、庭師は嫌そうにため息を零した。 「え…じゃあ、ここに2人いるのって奇跡ッテコトー!?」 「はあ…まあ、そうかもな…」 「じゃあさじゃあさ!お兄さんは螺旋丸できたりする!?」 「僕と君の能力は違う。よって螺旋丸は無理」 「なぁんだ…じゃあお兄さんの能力って何?」 庭師は顔を顰めながらこちらをちらりと見て、ちか…、と呟いてはまた植物に向き直った。 「………相手の心がわかる。」 「…マジ!?すご!」 「すごくない。別に知りたくもないし。」 彼のその横顔は、確かに心底嫌そうで その気持ちは自分も痛いほどわかるような気がした。 話ぶりからして彼も相当に辛い思いをしてきたのだろう。 「あ、そっか…だからパースの言ってることが分かったんだね」 以前彼に伝えられた事を思い出した。 名前だってどうやって知り得たのか、今まで考えてもいなかったが確かにそう思うと辻褄が合う。 「そう、僕がしたことは君の正体をゼアレスに勝手にバラした。 だから謝るのはおかしいだろってこと」 庭師の言葉に、ああそうか、とまた思い至る。 だから彼は自分を助けに来られたのだろう。 ツツジは苦笑して頷いた。 「そっか……でもそれでもごめんなさいかも。 だって多分…結構嫌なもの見せちゃったよね」 自分の心の中はきっと相当汚かったに違いない。 ツツジは少し恥ずかしくなり自分の胸を抑えながら俯いた。 「まあな。おかげで寝込んだ。」 「う…やっぱり…」 「でも別にいい。僕もわかる所があるからそうなったんだろうしな。 君だけじゃない」 わかる、またその言葉にツツジは胸がじんわりと熱を持つのを感じた。 誰かにわかってもらえることってあるんだな、と。 「…ゼアレスは、お人好しでダメな奴だが もっと思ってる事を話してやった方が嬉しがると思うぞ。 そうして貰った方が僕も煩い泣き声に飛び起きなくて済むし」 「え……そういうのも聞こえてたの?」 「たまにだけど。クソデカ感情の時は聞こえる」 「うわちゃーはずう」 他の同じような奇特な存在がいることが 同じベクトルの話ができていることがなんだか不思議な感じだった。 「君の心は辛すぎて正直あんまり読みたくないけど でも、…初めてちょっとだけ他人に共感できた気がした」 庭師はこちらを見なかったが目を細めて、どこか笑っているようだった。 ツツジは素直に嬉しいと感じて風で彼の髪を揺らしてしまう。 「ねえもっと話そ!ね!」 「…作業したいんだが」 「しながらでいいから!なんなら手伝うし!」 「絶対触るな」 分かろうとしてくれる人も分かってくれる人も、ツツジにとっては初めてで 単純にいいものだな、などと思ってしまうのだった。

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