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化け物同士 5
サンルームに怖々と明かりを向けながら近付くと、生い茂る草花の下からひょこりと誰かが顔を出した。
地面を這うようにして現れた真っ白な顔に一瞬心臓が飛び跳ねたが
その美しい幼い顔立ちと黄緑色の髪に、すぐに誰だかわかって思わず這いつくばる。
「蜂蜜…!?」
蜂蜜は真顔でこちらを見上げてくると、またガサガサと葉を揺らしながら植物の下から這い出て来た。
立ち上がったその姿は、最後に彼の姿を見た時とは違い
透明になっている所はなく肌も綺麗に戻っていた。
しかしその身体はなんだか小さく、幼くなっているような気がしてならない。
以前の蜂蜜は12歳くらいに見えたが今は5、6歳のように見える。
「治ったのか…?大丈夫か…?」
ローザが声をかけると、蜂蜜はじっとこちらを見てくる。
その吸い込まれそうな青い瞳から流れ込んでくる感覚にローザはハッとなり頷いた。
「え…ああ、ツツジは無事だ…戻って来てる…」
ランプに照らされた蜂蜜はいつもの笑顔を無くしていて、
なんだか神秘的なオーラを纏っているように見え
この存在が人とは明らかに違うことを思い知らされる。
「蜂蜜……」
その心の中は、何かまるでバリアでも張られたように読み辛くて
ローザは少し怖くなってしまい床に這いつくばったまま蜂蜜を見つめた。
蜂蜜はローザの横を抜けて歩いていき、
やがて閉じられた扉の前に来るとこちらを振り返ってきた。
「…!」
頭の中に流れてくる感覚に飛び上がるように立ち上がり、
蜂蜜の元へ行き扉を開けてやった。
真っ直ぐと迷うことなく歩いていくその後ろ姿をぼうっと見つめてしまう。
普段の所作やその可愛らしさで忘れそうになるが
やはり蜂蜜は自分たちとは明らかな一線を引いた存在なのだと感じる。
緊張のためか自分の呼吸が浅くなっているのを感じ、落ち着けながら彼の後を追いかけるのであった。
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