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化け物同士 8

突然喋り出した庭師の言葉は、 本を読み上げるように感情を感じられない声で、蜂蜜の言葉なのか、と悟った。 蜂蜜はいつものにこにこした様子と違い、真顔でこちらをじっと見ていた。 「だが山はお前を試すだろう。 人の法においての罪はわからない。 だが存在としての在り方は見られている。この山にいる以上 ゼアレス、…ローザ、お前達もだ。」 「存在としての“良き在り方”と人の価値でいうところの“善”は異なる 良き在り方の全てを蜂蜜が説くことはできない…が、 人の言語で言うとすれば、命を尊ぶこと、…」 「生き物はみな何かの命を奪って生きている。 そして一度完全に失ったものはどれほど後悔しても帰ってはこない 命の価値は平等だ。 命の償いをしたいのであれば他の命に注ぐしかない。 他の命には己も含まれていることを忘れるな。 人だけは何故かいつも己を疎かにする。 たとえ他の命を救っていても、己を疎かにし続けるのは良き在り方とはいえない。 その行為は理解し難く、面白いところではあるが」 「少し喋りすぎた。また時を進めたい。蜂蜜を頼む」

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