157 / 162

契約 2

蜂蜜の復活に伴い、部屋の扉はまた開けっ放しに戻っていた。 ツツジの部屋を覗き込むと、彼は目を覚ましていて 部屋の中に流れる穏やかな風の中、ベッドの上に足を投げ出して座っている。 一応開いたままの扉を軽く叩くと、ツツジはこちらに顔を向けて微笑んだ。 「おじさん!おはよー」 「ああ、おはよう」 返事をしながら、 2人分の朝食をベッドの横に設置したテーブルの上に置いた。 「ちゃんと寝られたか?」 「うーん。あんまり?」 「…そうだな、私もだ」 “神の言葉”を受けてツツジも流石に色々考えずにはいられなかったのだろう。 椅子を持ってきてベッドの横に置き、腰を下ろした。 ツツジもテーブルの近くへ移動してきて、ベッドに腰掛けるように足を床に下ろした。 「お兄さん大丈夫だった?」 「体には異常ない。未知の領域に触れて疲れたのだろう。 そもそも病み上がりだったしな。 今日はおとなしく寝かせておこう」 「そうなんだ… 普段から蜂蜜ちゃんの声聞いてたわけじゃないのかなぁ」 「蜂蜜や動植物は人の言語では喋っていない、と以前に聞いた事がある。 だから“言葉をおろした”と言っていたのだろうな…」 「ふーんそっか… まあでもきっとお兄さんにしかわからないことなんだろうね」 ツツジは何か考えるように天井を見上げやがて、うん、と1人で何か納得しているようだった。 その領域もまたゼアレスには分からないものだったが、なんだかそれはそれとして 分からないなりに見守っていたいような気持ちであった。

ともだちにシェアしよう!