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契約 2
蜂蜜の復活に伴い、部屋の扉はまた開けっ放しに戻っていた。
ツツジの部屋を覗き込むと、彼は目を覚ましていて
部屋の中に流れる穏やかな風の中、ベッドの上に足を投げ出して座っている。
一応開いたままの扉を軽く叩くと、ツツジはこちらに顔を向けて微笑んだ。
「おじさん!おはよー」
「ああ、おはよう」
返事をしながら、
2人分の朝食をベッドの横に設置したテーブルの上に置いた。
「ちゃんと寝られたか?」
「うーん。あんまり?」
「…そうだな、私もだ」
“神の言葉”を受けてツツジも流石に色々考えずにはいられなかったのだろう。
椅子を持ってきてベッドの横に置き、腰を下ろした。
ツツジもテーブルの近くへ移動してきて、ベッドに腰掛けるように足を床に下ろした。
「お兄さん大丈夫だった?」
「体には異常ない。未知の領域に触れて疲れたのだろう。
そもそも病み上がりだったしな。
今日はおとなしく寝かせておこう」
「そうなんだ…
普段から蜂蜜ちゃんの声聞いてたわけじゃないのかなぁ」
「蜂蜜や動植物は人の言語では喋っていない、と以前に聞いた事がある。
だから“言葉をおろした”と言っていたのだろうな…」
「ふーんそっか…
まあでもきっとお兄さんにしかわからないことなんだろうね」
ツツジは何か考えるように天井を見上げやがて、うん、と1人で何か納得しているようだった。
その領域もまたゼアレスには分からないものだったが、なんだかそれはそれとして
分からないなりに見守っていたいような気持ちであった。
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