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契約 3
「へへ、お腹すいちゃったー。いただきまーす」
ツツジは言いながらもテーブルの上の朝食に手を伸ばした。
狭いテーブルの上にギリギリ乗っている2人分の朝食等を一緒に食べながら
彼が発信しているらしい穏やかな風を肌に感じて
その暖かな風は彼の心に近しいものなのだろう、と思うとふと愛おしく感じて目を細めた。
「……どうしたの?」
その様子を見て、ツツジは不可解そうに小首を傾げる。
「いや、なんだろうな…
愛しい人を常に全身で感じられてると思うと、私は贅沢だな、と…」
彼の近くにいるだけで、この風にいつも包まれていて
それは彼の心に抱きしめられているようなものに違いない。
ツツジはパンを口に突っ込んだまま、目を丸くしている。
「…え、あ、すまない…気持ち悪かったか…?」
つい思ったことを言ってしまいゼアレスは焦って苦笑した。
ツツジはそのままの状態で、
ロボットのようにぎこちなく首を横に振った。
「…不意打ちでそういうえっちぃこと言うのあかんて」
「は?」
「やば鼻血出てきた」
「わ、バカ動くな!そのままじっとしてろ!」
急に鼻から血を滴らせ始めるツツジにゼアレスは慌てて医療道具を山積みにしてあるテーブルに走った。
心なしか吹いている風の温度が上がった気がした。
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