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第9話

「先生こそ・・・・・・何で、一人でここにいるんだよ。」 「は?」 「ここ、ゲイバーだよ?」 男とラブホから出てくるくらいだから、まあ恐らくそうなんだろうけど、と思いつつ朝野を見上げた。 「・・・・・・。」 朝野は一瞬びくっとして視線を逸した。 「だって、さっきーーー、」 「祐也もゲイなのよ。こう見えてすっごい遊び・・・・・・」 「幸久。それ以上言ったらぶっ殺ーー、じゃなくて生徒の前で変なこと言うなよ。」 あー、うん。今確実にぶっ殺すって言おうとしたよね。 「お前は何でもそんな金が必要なんだ?」 ユキさんの口元を抑えていた手を離しながらゲイバレしたのは何でもないかのように先生らしく聞いてくる。 「あー、うちさぁ両親ともにオレが小さい頃に死んじゃってて、で、父さんの方のじいちゃんと暮らしてたんだけど、去年亡くなったんだよね。母さんの方の祖父母はオレが生まれる前に亡くなってて今はひとり暮らししながら学校通ってて、まあその学費とか生活費とか色々必要で。」 そこにいる大人たちがシーンと静まり返る。 普段さ、このバーに学校の先生なんて来ることないし、学校にはもう一つやってるアルバイトの方を申請してるからこっちのことは知らない。 「・・・・・・まあ、事情はわかるが、まだ高校生だしなぁ。それにここで働くってことは。」 「オレも先生やユキさん、ショウくんと同じ。」 そう言うと何だかよくわかんない複雑な顔をする。 「・・・・・・わかった。事情があるなら仕方ない。けれどバイトばかりで勉強おろそかにするのは駄目だからな。」 朝野って見た目は適当に先生やってんだろうなぁって感じなんだけど、意外と真面目なんだよなぁ。 「祐也、それなら大丈夫よ。勉強は私が見てるから。」 そう。オレはここでバイトしながら、空いてる時間とかにはユキさんに勉強を教わっている。

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