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正しい雌の育て方

 天嘉が蘇芳によって連れ戻された時、屋敷にいたものの顔色は一様に悪かった。理由は簡単で、蘇芳が細君に無体を強いるのではという心痛に苛まれていたからだ。  特にツルバミと青藍は怒気を含むような足音でズカズカと奥座敷に向かう蘇芳に取り縋るように懇願をした。  天嘉は先走ったが、決して悪いようにするつもりがなかったこと、そして己の立場を理解して上で今回はああいう行動を取ってしまったが、次回は決して行わないようにこちらがきちんと見張っているということも含めて、蘇芳によって担ぎ上げられた天嘉を心配げに見上げながら宣う姿に、天嘉は泣き腫らした顔で小さくごめんと呟いた。   「何に対してのごめんだ。馬鹿者。」 「みんなに、迷惑かけちまった…。」 「根底が違う。心配をかけてだ。」    青藍とツルバミを無言で締め出した蘇芳は、奥座敷に入ると乱暴に襖から寝具を取り出す。  いつも丁寧にツルバミが敷いてくれるそれらを、まるで投げるようにして準備するのだ。よほど腹に据えかねている。   「頬を張ったことはすまなかった。それは謝る。」 「俺が、お前裏切るようなことしちまったからだろ。」 「ああ、本当にな。危うく俺は義骸達を処さねばならんところだった。」    天嘉を用意した布団の上に座らせる。雄自ら巣作りをしたこのテリトリーから出るには、蘇芳の気が済まねば許されない。  天嘉は大人しく膝を抱えるように縮こまると、向かいに座った蘇芳がそっと赤らんだ頬を撫でた。  天嘉はその頬に添えられた手に触れると、ゆるりと擦り寄った。大きな手に指を絡め、ごめんなさいと謝るようにしおらしい。蘇芳は頭を引寄せ、強く胸に抱き込む。優しくその頭を撫でながら、泣いて赤らんだ目元に口づけた。  愛おしい、蘇芳だけの雌だ。怒りに任せて頬を張ったとき、その薄い色味の瞳が濡れた艶を帯びたのをみて、交わりのときのような加虐心に煽られた。  それでも、蘇芳のその一振りは正しく天嘉によって意味を汲み取られ、こうして今腕の中に戻ってきている。  行動で甘やかしてはいても、怒気は滲む。だからツルバミや青藍が慌てたのだろう。    天嘉の腕についた小さな歯型の手当は、甚雨によって施された。この礼は青藍を通じて伝えればいいだろう。義骸も、今日は帰ると宣っていたので、後日なんらかの詫びは届けられるだろう。  全てが天嘉によって納められた。しかし、それなのに蘇芳の中で未だ燻るこの種火は、不安定に揺らいだままだ。  蘇芳はそれをゆっくり飲み込むと、天嘉の頬を両手で包むようにして顔を上げさせた。   「他の雄に、ましてや他山の総大将に跨るなんぞ言語道断。俺はお前への愛情を腹に散々わからせてやったつもりだったのだけどなあ。」 「ッ、ん…ふ、」    頬を撫でていた手のひらはゆっくりと唇をなぞったかと思えば、グチリと音を立て、太い指が天嘉の口の中に侵入する。こじ開けるようにして舌の表面を親指の腹で擦られると、それだけで天嘉の背筋は甘く震え、吐息に甘やかな色合いが微かに混じる。  自分の手で、天嘉の理性がゆるりと解ける。この瞬間が好きだった。  あの時天嘉から発せられた言葉。あの麻薬にも似た甘美な響きは、蘇芳の身の内を満たすのには十分過ぎたものであった。しかし、しかしだ。大天狗は貪欲だ。妖かしは総じて、皆一様に自我が強い。だからその先を欲してしまう。それも、全て番によってその欲を掻き立てられるのだ。   「天嘉。お前の価値は俺だという言葉、しかと心に受け止めた。ならば示してみよ。」 「俺、の…っ…」 「そうだ、お前の蘇芳だ。」 「あ…、…」    お前の蘇芳だ。その言葉を聞いて、天嘉の体は熱くなった。蘇芳によって雌にされたこの体が、こうして目の前の極上の雄に熱の籠もった目で見つめられ、腹に収められるのを今か今かと打ち震えてながら待っている。  ごくりと小さな喉仏が上下し、琥珀色の瞳が蜂蜜のようにとろける。そろそろと誘われるように四つん這いで蘇芳に近づくと、天嘉は本能的に蘇芳が何で証明して欲しいのかがわかってしまった。   「いい子だ天嘉。もう二度と過ちは犯さぬように、しかとその身に刻み込んでやろうな。」 「ん…、」    まるで犬のように股座に顔を寄せた天嘉が、ゆっくりと蘇芳の下肢に手を伸ばす。寛げられた着物の隙間から、下着に包まれた逸物を辿々しく取り出した天嘉の様子を、蘇芳は黙って見つめていた。  はぷり、震える唇がゆっくりと口内に招き入れる。小さな口を目一杯広げても全て含むのには苦労する。口端がひりついてしまうほど、大きい蘇芳の性器を咥えるのは服従の証だ。大妖怪である蘇芳が一塊の人間である天嘉と対等であるのは夫婦であるからだ。しかし、時々その関係が揺らぐ時があった。  それはこうして天嘉が粗相をして、躾として身に教え込まれるときや、天嘉が不意に感じる寂しさを埋める時。  この大きな存在によって、前後不覚にされるほど心身ともに翻弄されると、普段蘇芳が己に対してどれだけ気を配っているのかを理解する。  糸もたやすく蹂躙することだって可能だろう。力の強い蘇芳が、心配りをしてくれるから、己が人間としての尊厳を保ったまま生活できているのだと実感するのだ。つまり、それくらい身の程に知らしめる蘇芳の征服は強く、そして、それを感じる体に己の体が、もう雄には戻れぬのだと自覚する。  蘇芳が三日間巣の中から天嘉を出さなかった時に、こうして心の隙間を埋める方法を教えた。守られる喜びを、そして雌としての服従の喜びを教え込んだのだ。だから、天嘉は蘇芳によって、立派な雌にされてしまった。   「ゆっくりと喉を開け。今日はここまでいれるぞ。ここだ、わかるか。」 「ふ、ぐ…んぅ、、え、ぇ…っ…」    蘇芳の大きな手のひらが、天嘉の小さな喉仏を通り過ぎ、鎖骨の窪みを指先で触れる。そんなことをするものだから、天嘉は身を竦ませるような微かな恐怖感と、淡い期待感が入り混じる。訳のわからない思考のまま、蘇芳がして欲しいのならやるしかないよなあ。だなんて思って、つい頑張ってしまう。  雌には雌の矜持がある。己が好いた雄の願いの一つや二つ、叶えられなくてどうするのだ。そんな具合に変なところで男気を見せるものだから、天嘉は望むまま、えずきながらもゆっくりと飲み込むようにして、喉の奥まで雄々しい性器を招き入れる。    「ん、んぅ…ぇ、ぐ…っ、」 「はぁ、気持ちがいいな…天嘉。いいこだ。やれば出来るではないか。」 「ん、んぅ、ぶ…ッ…っ、…」 「吐くのは許さない。堪えなさい。今からここに精を飲ませてやるから、一滴も残さずに飲み干せ。」    ゴポリと込み上がってくるものを深呼吸で必死に逃す。肺を膨らますくらい喉を開いて呼吸をし、一呼吸するたびに広がる喉に性器を埋め込んでいく。顔は苦しみのせいで真っ赤に染まり、鼻水も涙も全部垂れ流しだ。  腰を震わし、蘇芳の精をつけられることを期待しながら、熱に浮かされた情けない顔で蘇芳を見上げる。  小さい口を目一杯開きながら、蘇芳の茂みに鼻先を埋めた。視界がぼやけ、脳に酸素が行き渡らない。首を絞められているような感覚だ。  口から溢れた唾液がだらしなく顎から垂れ落ち、ポタポタと天嘉の手の甲と敷き布団に染み込む。粘着質な先走り混じりのそれは蘇芳の茂みを濡らした。  よしというまで動かない。それも天嘉が雄を喜ばすためだと蘇芳から教えらえた事の一つであった。  背筋を震わし、びしょびしょの顔で蘇芳の性器を甘く吸う。その催促とも取れる行為に喉奥でくつくつと笑うと、その小さな頭を両手で固定した。   「っん、ん、んぐ、ぅ、ぅう、ぐ、っ…!!」 「ほら、鼻で呼吸をしなさい。そう、唾液は飲み込まずに垂れ流せ。そう、ああ、いいな、上手だ。」 「ん、んぇ…ぶ…っ…!」 「喉を開け。決して零す事は許さん。」 「ーーーーーッぐぅ、っ…」    ぎゅぽんという音がして、天嘉の喉奥深くまで挿入された。琥珀の瞳がキュウっと細まり、全身が震える。傘のはった部分がうまい具合に喉の奥を押し開いて、入ってはいけないところまで入ってしまったのだ。口端が、もう開かないという所まで伸び切り、顎が軋む。  天嘉の喉が痙攣する。有無を言わせず幹が膨らむと、ゴポリと音がして粘着質なそれがどぷどぷと喉の奥を滑り、胃の腑へと直接注ぎ混まれた。  天嘉は脳味噌が馬鹿になってしまったのではと思うくらいに熱暴走してしまった。  くるんと目玉は上をむき、意識が飛びかける。体の警告信号はしっかりと働き、自身の意志とは裏腹に、びちゃびちゃと音を立てながら失禁する。内股を幾筋もの水流が伝い、膝がガクガクと笑う。頭にモヤがかかったように虚ろな思考でありながら、無意識にごくんと喉を鳴らして精液を飲み込むと、蘇芳がゆっくりと喉奥深くから性器を引き抜いた。   「っひゅ、…ぅえ、あ、ぁー…っ」  そのまま、べしょりと蘇芳の体にもたれかかるように倒れ込む。がひゅがひゅと知らない呼吸を繰り返し、むせることもできずに過呼吸じみた酸素の取り込みで、必死に意識を繋ぎ止める。ぼやけた視界は戻ってきたが、次いで目の奥からは涙が溢れた。生きててよかったという、人として正しい情緒と、脳から出た麻薬じみた快感に体を支配される恐怖感。そんんな有り様になっても、震える腕で蘇芳の腰にしがみ付くと、呼吸の合間に精液で汚れた性器を、舌で舐めとった。蘇芳の躾を体が覚えている証拠だった。 「ふふ、愛い。口やら鼻やら、精液まみれがよく似合う。まだ終わりではない、足を開き、腰を上げろ。」 「す、ぉ…や、やだ…」 「二度言わせるな、これは躾だ。お前が同じ過ちを繰り返さぬようにな。このまま腹の休む間も無く抱き潰されたくないのなら、差し出せ天嘉。」 「っ…、は、い…」    身が震える。蘇芳の仄暗い瞳が、嫉妬心を如実に表していたからだ。天嘉は震える足を開きながらも、心の内では満たされてしまっているのだから始末に負えない。  歪んだ蘇芳の愛情は、美しいなと思う。そしてその愛情がまっすぐに天嘉に向けられることで、こんなにも体が喜んでしまうなんて。天嘉は粗相で濡れた足を情けなく開くと、蘇芳は濡れた布団など意に介さずに足の間に腰を進める。  天嘉の立膝を、割り開くようにように大きな手で包み開かせると、蘇芳は白い腿の内側に舌を這わした。天嘉が汚いからというと、がじりと遮る手を甘噛みをして嗜めなれる。やがてにゅくりと刺し込まれた長い指をゆっくりと腹に収めると、天嘉の体は折り曲げられるようにして腰を持ち上げられた。   「早々に気をやってくれるなよ。」 「ぁ、あ、やっ…む、無理…っ」 「甘い声で泣きながら宣うか。説得力がなくて大変に宜しい。」    天嘉の内側に差し込んだ指は、雌として優秀に育った媚肉によってもてなされた。狭い胎内は吸い付くかのように指に絡みつき、指の侵入と共に押し出されるようにして零れたぬかるみが、蘇芳の手の甲の血管をなぞるように伝う。ああ、胎が喜んでいる。天嘉の体が、今か今かと待ち望むようにして蘇芳の指を喰みながら待ち望んでいるのだ。   「ゃ…やだぁ…、は、ずかし…」    正直な体に顔を赤くしながらぐずると、蘇芳は宥めるようにそっと額に口付ける。内壁に纏うぬかるみをこそげるようにして指を動かすたびに、とろとろと粘液でこなれた穴へと仕上がっていく。  蘇芳が指を引き抜けば、赤い媚肉が惜しむようにして内壁をひくつかせるのが可愛い。勃起して痛いほど張り詰めた性器に手を添えると、先端を擦りつけるようにして仕上がったそこに含ませる。まるで舐めしゃぶるかのような肉の蹂躙に小さく息を詰めたが、口元を抑え腕の檻の中で、期待に震えている嫁を見下ろすと、堪らなくなって一息に挿入した。   「ひ、あーーーーーーっ、」 「く、ぁ…っ、」    挿入の衝撃で高い悲鳴が上がる。蘇芳は腰を震わせるほど甘やかに性器を締め付けられた。本当は馴染むまで待っててやるかと思っていたのに、そんなに可愛く鳴かれては期待に応えねばなるまい。  がしりと大きな手のひらによって、細腰を鷲掴まれる。金色に染まった獰猛な瞳に見下ろされながら、天嘉はその身を引きずり下ろされるかのようにして、一気に腹の奥深くまで腰を撃ちつけられた。  

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