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番は己が羽の内側で

「っぁ、ああ、あ、あ、…っ…」    白い喉元が蘇芳の前に差し出されるかのようにして晒される。そこは仄かに噛み跡が残り、過去の自分からの野暮な戒めが蘇芳を嗜める。  口元からだらしなく溢れた天嘉の唾液の一筋が、艶かしく首元を伝っていた。蘇芳は誘われるようにそっと首筋に唇を寄せると、噛み跡の代わりに強く吸い付いて鬱血痕を残した。   「天嘉、」 「ひ、ぃ、ぃあ、あっや、んン…」 「前後不覚か。」 「んン、ぅあ、あー…」    蘇芳の長い黒髪が、天嘉の目には檻のように見えた。逞しい腕の中、狭くて熱くて、苦しくて仕方がないはずなのに心地いい。天嘉の思考は、まるで真綿で丁寧に包んだようにぼやけていた。本能が、前に出る。蘇芳の精を求めるために、無意識に蘇芳の腰に足を絡ませて、自ら尻を押し付けるのだ。  子供のように情けなく泣きながら、それでいてまだ足りぬと言わんばかりにはしたなく誘う己の雌に、蘇芳が煽られないわけがないのだ。   「お前は、誰のものだ。」 「す、す、ぉ…っ、」 「聞こえぬ、お前の体は、誰のものだ天嘉。」 「すお、う…ぅ…ぃあ、あっ…」 「そうだ。お前の涙の一粒さえ俺のものだ。お前の体の所有権はこの蘇芳にある。ゆめゆめ忘れるな。」 「ひぃ、あ、あ、あぁ、っや、やぇへ…っ、も、死ぬ、ぁ、あっ!」    大きな体で覆い隠すように組み敷き、天嘉は長い黒髪に閉じ込められたまま、涙で蕩けた瞳に蘇芳を写した。  黄昏色の不思議な色合いは、いつぞやか爛々と輝く金に染まっていた。そしてその瞳孔は獣のそれに変化して、今にも食い殺さんと言わんばかりに獰猛に見下ろされている。  天嘉が、震える掌を蘇芳の頬に添えた。長い黒髪を耳にかけて、その余裕のない雄の顔を晒す。大きな手が天嘉のその細い手首を緩く握りしめると、華奢な手の平に甘えるように擦り寄った。  撫で梳く黒髪に混じり、猛禽の羽根に指先が触れた。興奮して、妖力を垂れ流して部分的に獣化してしまった目の前の番に、天嘉は胸を甘く鳴かせる。   「は、ぁあ、あっ…か、ぁい…す、ぉ…ッ…好き…あ、ぁ…っ…好き、…」 「ぐぅ、…ば、かもの…」    ぶわりと金の羽毛が目尻から顳顬にかけて走る。猛禽類の瞳がきゅうと引き絞られると、蘇芳は慌てて腰を止めて顔を覆った。   「ひぅ、や…っ…な、んれ…」 「馬鹿者、俺を獣にさせるな。くそ、治らぬ…。」    男らしい血管が走る手の甲には、鱗にも似た鳥類独特の脚鱗が広がっていた。美しくも醜い、妖かしの特徴を如実に晒したその光景に、蘇芳は怖がらせてしまうと思ったらしい。左手で覆い隠すようにしてそこを抑えると、天嘉がゆっくりとその歪な脚鱗に覆われた右腕に触れた。   「も…、お前の、嫁…だから、…怖いとか、なぃ…」 「……、天嘉、」 「俺、が…全部みせてんのに…隠すなよ、ばか…、」    ズビりと鼻を鳴らしながら、掠れた声で宣う。天嘉の言葉に、蘇芳は小さく息を飲むと、その歪な腕で恐る恐る天嘉の頬に触れる。右腕は、もう隠せないほど猛禽のものに姿を変えている。鋭い鉤爪を持つ指先は歪に湾曲し、羽毛混じりの腕には硬い脚鱗が浮かび上がる。蘇芳の顔の右半分はじわじわと獰猛な獣の容貌へと変わり始めているというのに、天嘉は厭わずに熱のこもった瞳で真っ直ぐに見つめてくる。   「醜くはないか。」 「好き、」 「そうか…。」    くつりと笑うと、蘇芳はようやく気性が落ち着いたのか、ゆっくりと羽根がハラハラと舞うようにして元の顔に戻る。獣の瞳孔も、天嘉が甘えるように鉤爪に口付けてくるものだから、気がつけば元の穏やかな色をとり戻す。   「…ああ、離したくはない。」    ぽつりと呟かれた一言が、天嘉の胸を甘く締め付ける。囁くように宣った蘇芳が愛おしくて、天嘉はゆっくりと蘇芳の首の後ろに腕を回して引き寄せた。黒髪に頬を擦り寄せ、優しく撫で梳く。幼児にするような甘やかしを、天嘉は蘇芳に行った。    細い足で腰を挟み、腹の中には性器を埋め、人には言えないやらしいことをしながら、天嘉は蘇芳を甘やかした。蘇芳は、大人しくその腕に抱かれながら、肩口に顔を埋め、そして細い首筋を何度も甘く吸いつきながら、愛おしむように羽の内側に囲いこむ。   「蘇芳、は…いいこ、だな…」 「…、そうか。」 「そう、だよ。」    腹の中を満たす大きな性器に散々喘がされた口で、そんなことを言う。  思わず出てしまった蘇芳のその一言に、天嘉は蘇芳が自分をずっと待っていたことを思い出したのだ。  天嘉に出会うまで、ずっと健気に待ち続けていた大妖怪。離したくない。その言葉は、ひどく臆病で愛おしい。    ここにきて、孕まされて、ようやくお互い好きを素直に差し出せるようになってきたのに、天嘉があんな行動を起こすから、蘇芳は怖くなってしまったのだ。   「ひぅ、…っ…」 「すまん、」 「ぁ、あ、お、ぉぐ…いや、ら…!」    とろめくような慈母の優しさに、蘇芳が兆したらしい。がぱりと大きく足を開かれた。先程の甘えの照れを隠すかのように、大きな手の平が太ももの内側を抑えてくる。熱い、熱いし、これはなんだか恥ずかしい。  いつしか蘇芳の頭を撫でていた手のひらでシーツを乱し、ついには腰で尻を持ち上げられるようにがくがく揺さぶられて、天嘉は気持ちいいが振り切ってしまい、先ほどからは喃語のような喘ぎ声しか出せなくなっていた。    蘇芳は、自分の手でいやらしく乱れる天嘉を見下ろしながら、時折立ち上がった性器を握りしめては手慰みのように擦ってやる。そうすると天嘉のそれが膨らんで、まるで間欠泉のように噴き出す潮が面白いのだ。   「ここに入りたい。力め。」 「ひぃ、や、だ、だぇ…ばか、になぅ、あ、あー…」 「俺は、いい子なのだろう?ならば、褒美のひとつくらい強請っても許されるはずだ。」 「ご、ほー…び、?ぁ、あっ、すぉ…ほ、ほしー、…んぁ、っ」 「ほしい、俺がいいこなら、お前からのご褒美がほいい。」 「ひゃぅ、あ、す、吸っちゃ…い、いぐ、いぐからぁ、あ…!!」    細腰を鷲掴まれ、先ほどから天嘉がダメになってしまうところばかりを蘇芳は執拗にいじめてくる。イくと言っているのに、もうこんなに恥ずかしい体液で腹を汚していると言うのに、まだ足りぬと言わんばかりに腰を押し付ける。  いい子、いい子かあ…そういえば俺が褒めたんだもんなあ…。  天嘉の熱に浮かされた思考の中、いいこならいいかと流された。天嘉の腹に微かに力が入ったのに気がつくと、蘇芳はその整った顔を嬉しそうに綻ばせた。   「っぉ、ぐ…!っあ、ああぁ、あ、つ、よぃ、や、ぁぁあ、あ、ああッ…!」    ぐい、と一際強く蘇芳が腰を押し付けてきた。太くそりあがった傘の部分が、天嘉の大切な部屋をぶち抜いて押し広げていく。弁を引っ掛け、ぎゅぽぎゅぽと聞くに耐えない音をたてながら、蕾を擽るほど近くに蘇芳の下生えが押し付けられる。   「ぁ、あがちゃ…い、ぃぅから…ッツ、づよ、いのだぇ、え…や、あ、ああッ」 「そんなに、やわ…、ではない、わ…」 「ひぅ、あ、ああぁっ、き、もち…の、やぁ、だあっ、おじ、まい…ぃいっ…!!」    蘇芳の背に爪を強く立てながら、ぎゅぽぎゅぽと敏感な部分を擦られる。天嘉は目を見開いて悲鳴じみた嬌声を上げながら、腹の子供を心配する。髪を乱して悶絶して、時折逃げるように腰を浮かせれば、蘇芳の大きな手によって押さえつけられて、さらにごちんと結腸を叩かれる。暴力にも似た快楽に、天嘉は小便を垂れ流しながら泣いてよがった。   「はぁ…あ、…お前は、本当に幼くて愛おしい。」    泣いてベチャベチャの顔を眺めながら、幹を膨らませる。腹にびちゃびちゃと熱い水流を感じながら、蘇芳はうっとりと微笑んだ。  自分の手のひらでこんなに喜び、だらしなく失禁をして全てを曝け出した姿が、本当に愛おしくて可愛い、自分だけの雌。   「はぁ、ほし、がるな…。きちんと、一滴残らずお前の腹に種をつけてやるからな、」 「あぁ、ぅ、う、うー…や、ぁ、あら、ひ、…ぃん…っ…」    幼児のように泣きながら、まるで涙を擦り付けるようにして蘇芳に甘える。いやだ、やめて。口ではそう言っているくせに、蘇芳のいやらしい雌は腰に足を絡めて全て注げと主張してくる。  喉奥でくつくつと小さく笑うと、天嘉の頭を抱きこむようにしてガツガツと揺さぶり、最奥に叩きつけるように流し込んだ。   「ひぎ…っ…うぁ、あ、あああ、あ、ぁっい、いぐ、すぉ、んぁ、あーーー!」 「ーーーーーっ、く、」    幹を脈うたせ、揉み込むように絡みついてくる内壁に己の性器を蹂躙されながら、突き抜けた弁の奥、己の妖力を叩きつけるようにして一滴も残さずに注ぎ込む。  腹に熱い飛沫を感じ、ゆっくりと見下ろした。蘇芳の臍に天嘉の性器が擦れたせいで射精したらしい。薄くなった白濁が絡みつく己の腹を見て、腰のあたりに大地図を作って気絶している天嘉を見下ろした。   「はぁ、…」 「ん、ふ…、」    泣き腫らし、ぐったりとする天嘉の唇をこじ開けて、蘇芳は唾液を含ませる。薄い舌を甘く吸ってやれば、こくんと喉仏を動かしながら飲み込んだ。   「俺の体液だけで生かしてやりたい。ああ、青臭い思考だなあ…」    口端に溢れた唾液を拭ってやると、そんな醜い独占欲の現れのような思考に苦笑いした。  薄い腹が、蘇芳の出した精液によって膨らんでいる。ぽこりとしたそこを愛おしむように撫でた後、蘇芳は細い体から引き抜くことなく抱き込んだ。この雌を離したくない。今はただ、己の気の済むまで繋がっていたかった。    

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