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小さな鼓動 **

「やぁ、やら、あ、あぁ…あっ…」    こんなに雌臭い声が出せるようになるなんて、思いもよらなかったなあ。  室内に、認めたくない己の甘ったるい声が響いた。   「駄々をこねるのがうまいなあ、まあ、そこも愛らしいが、」 「ひぃ、うっ…ち、んち…いじん、な、ぁ…」 「腹でイきたがらないくせによく言う。」 「ひゃ、ぁあ、ン…っ!」    にゅち、とか、ぐちゅ。何が行われているか、想像してはいけないような水音が、さっきからはしたなく響いている。    涙も涎も鼻水も、全部だらしなく垂れ流して、顔も下半身もびちゃびちゃのドロドロにした天嘉のいやらしい痴態を見つめながら、蘇芳は愉悦に浸っている。妖怪らしい笑みだ。少しだけ狂気を感じるようなその顔は興奮をあらわにして、天嘉の胸を刺激して吹き出る乳の一筋さえも無駄にはしないとべろりと舐めとる。   「ぁあ、あんン、い、いやら…あ、ひぅ…っす、ぉ…お、し、おし、まい、おしまいにしへぇ…っ…」 「いくら、俺がお前に甘いからと言ってもな…っ…」 「ぉ、お腹、きもひ、ぃの…やら、ぁ…あー…、あー…っ!」 「聞けるものと聞けぬものがある…っ、」    だから、それは無理というものだ。  ニッコリと可愛らしく大男が笑う。天嘉は喘いでいるのか大泣きしているのか、自分でも今がどういう情緒なのかわからなくて、それが怖い。気持ちが良すぎて怖いのだ。    ぎゅぷぎゅぷと、人から出てはいけないような抽挿の音と、蘇芳の腰を打ち付ける音が天嘉の聴覚を支配する。  乾いた涙で、眦が引き攣れる。縋り付いた蘇芳の背中には何本もの赤い筋が引かれ、天嘉の股関節は揺さぶられすぎて馬鹿になってしまったかのように、いうことを聞かない。  尻のふちが痺れて痛い。痛いのが気持ちいい。キツく抱きしめると、その分蘇芳も天嘉を抱きこんで髪を撫でてくれる。下半身は大忙しなのに、その手つきは労わるように丁寧で、天嘉は器用すぎるだろこいつと感心が顔を出したその瞬きの合間に、また雌のように甘い悲鳴を上げさせられるのだ。   「や、やだ、ぁ…っ、お、終わって、ぇ…っっ…き、気持ちぃの…も、いらぁ…い…、ひ、ぅうー…」 「よしよし、自分の意見が言えるのはいいことだ。だが断る。」 「いや、ら…っ…ばか、ぁ、あ、すお、ばかあ、ああっ…!」    ひん、と情けない泣き顔で抗議する。こいつ、絶対に許さん。抗議も辞さぬと感じながら怒るという器用なことをした天嘉が、抗議を主張するかのようにガブリと蘇芳の肩口に食らいつく。蘇芳よりもずっと小さなお口でぱくんと噛み付くのだから、むしろ可愛いがすぎると興奮して、蘇芳はその性器をさらに膨らませるから始末に追えない。   「い、イって…ね、え、イこ…っ?す、すぉ、も…一緒、イき、た…あ、あ、っだめ、ぇえっ…」    膨らんだ性器が押し開くせいで、天嘉の内壁は仕事ができない。締め付けて刺激をしたいのに、その幹が太すぎて引き絞れないのだ。だから、その内壁にみっちりと詰まった蘇芳の性器は尻を閉じさせず、そして今度は天嘉の一緒にという言葉に暴発しそうになった蘇芳がキレて、ばつばつと激しく揺さぶった。今は、蘇芳の性器を結腸の奥で舐めしゃぶっている。そこを擦られると、もう天嘉はなにも考えられなくなってしまうから嫌だった。   「きゃ、ぅっ、あ、あ、あ!ひィ、い、イぐ、あ、あっイぐがらあ…!と、とまっ、へ…っ…」 「嫌だ、」 「ま、た…もれ、ひゃ、ぅからああ!」 「それはいい、全部出せ。…っ、俺も、イきそうだ、…っ」 「やだやだやっ、あ、あああ、で、っ…ーーーっ!」 「く、ぅあ…っ…、」    叩きつけるような激しい腰使いで追い上げると、蘇芳は己の茂みをびしゃびしゃと濡らす粗相に、ギュルリと欲が昂るのを感じた。  声にならない悲鳴を上げながら、天嘉がのけぞる。散々吸い付き、甘噛みし、舐りたおした胸の頂は赤く腫れ上がりピンと立ち上がっていた。小振りな性器を律動によって跳ねさせながら、だらし無く、そして何かもわからぬものを撒き散らした天嘉は、腹の奥に夥しい量の精液をどばどばと注がれて、馬鹿になった尻の穴から飲み込みきれなかった精液を吹き零す。  全てを受け止めて、天嘉は開いてしまった股関節を閉じようともせず、事後の濃厚な性の香りを纏わせたまま身を投げ出す。   「…っ、はあ…、ぁ…」    袋の中身を空にするように、一滴も残らずに全てを腹に注ぎ込んだ蘇芳は、四肢を投げ出して気絶する天嘉の腹を汚す体液を、まるで匂いづけするかのように嫁の体に塗り付ける。   「はしゃぎすぎたかもしれんな、どれ、天嘉。」 「……、」    微かな呼吸音、意識を飛ばすまで抱き潰したのは久しぶりだ。蘇芳はずるりと腹から性器を引き抜くと、ぶぴゅりと恥ずかしい音を立てて、縦に割れた尻の穴から白濁が数度に分けて吹き溢れる。赤く腫れ、縁が捲れ上がった尻が健気で愛おしい。蘇芳は指を差し込みあらかた掻き出しし終えると、その膨らんだ腹に口付けた。    騒がしくしてすまないな、年甲斐もなく燥いでしまったのだ。そう我が子に謝ると、我ながら嫉妬心が強いのも困りものよなあと苦笑いした。どうやら気にしないと決めたくせに、狢に嫉妬していたらしい。    くたりとした天嘉の掌を掬い上げる。狢が握りしめた掌に舌を這わせると、がじりと小指に噛み付いた。  腹に己の子を孕ませておきながら、まだ足りぬというのかと、貪欲な自身に苦笑いが漏れる。  昔、遊女は己の間夫に愛情の証として小指を捧げていたという。蘇芳は唾液と歯形がついた天嘉の小指をまじまじと見つめると、そんなことを思い出した自分になんとも言えない顔をした。 「お前と番いになってから、俺は随分と貪欲になってしまった。ふふ、本当に…どうしてくれようか。」 「う、ン…」    柔らかな頬に甘く歯を立てる。可愛い、愛おしくて渡したくも、触れさせたくもない己だけの嫁御だ。  蘇芳はゆっくりと天嘉の体に覆い被さる。激しい行為で使い物にならなくなった包帯を剥がすと、傷口に舌を這わせた。    湯治でこの肩の傷も癒えてしまうのだろうか。薄桃色のそこを眺めながら、なんとなくもったいないなあと思う。  まじまじと見れば、天嘉の肩口は己の歯形だらけだ。どうせ消えるのなら、一個くらい残ってくれててもいいだろう。そう思って、治りかけの柔らかい肩口に歯を当てる。  優しく抱きしめ、頭を撫でつつ、ああ、また青藍にどやされるなあなんて思いながら、痛くないようにゆっくりと犬歯を沈み込ませた後、とぷりと溢れたそれに吸い付いて止血をした。      「ん、…す、ぉ…?」 「気にするな、お前は眠っていろ。あとは全て俺がやっておくからな。」    ひくんと身を震わした天嘉の意識が緩やかに浮上した。気だるそうにか擦れた声で、微かに名前を呼ぶ嫁に口付けると、チラリと肩口の傷に視線を巡らせる。やはり、妖力が馴染んだせいか修復し始めている。  蘇芳は、首筋に一つ鬱血痕を残すと。その身重の体を横抱きにして立ち上がった。  酷使した体を湯治で癒すためである。使い方が違うと脳内ではツルバミの声で茶々が入るが、意味合いは同じだろうと、部屋の縁側につながる襖を足で開いて外に出た。  ゆっくりと過ごしたくて、部屋から繋がる湯治場がある宿に案内してもらったのだ。  赤茶の透き通った湯船にゆっくりと天嘉ごと身を浸す。体を洗わずに入ったのは、単純に面倒くさかったからだ。   「あ、…?」 「流石に起きるか。」 「温泉…?」    蘇芳の肩口に頭をもたれかからせた天嘉が、ほうと息をつく。湯の中で腹を撫でてやれば、ぽこんと内側で何かが動いた気がした。   「んん…、」 「おお、」    寝ぼけてわかっていないのか、天嘉はむずがるように蘇芳の首筋に顔を埋めると、ゆるゆると首に腕を回して抱きついてくる。  そのまろい頬に口付けを一つ送ると、もぞもぞと顔を上げて天嘉が口付けを返す。どうやら機嫌がいいらしい。ぼんやりとした顔のままちぅ、とゆるく吸い付くと、天嘉はゆっくりと顔を離した。   「大盤振る舞いではないか。えらくご機嫌だなあ。」 「…たまにはな。」 「そうか、ああ、また動いた。」 「え?」    蘇芳の言葉に、天嘉がキョトンとした顔をする。子だ、というと、数度瞬きをしたのち、恐る恐るといった様子でそっと腹に触れた。    ぽこん、天嘉の腹に当てた手のひらに、微かな振動が伝わった。最近ずっと腹の中がぐるぐるしているとは思っていたが、まさかここまでわかるようになるとは、と驚く。  腹にもわずかな振動が伝わる。まだそこまで強くは反応してはいないが、確かに天嘉の腹の中で、蘇芳の子が元気に育っているということだ。    蘇芳の目の前で、天嘉の琥珀の瞳がじわじわと濡れていく。思わずその様子に目を見開いたが、こしこしと誤魔化すように目を擦ったあと、再び蘇芳の腕の中に天嘉が入り込んできた。まるで顔は見られたくないというように。   「湯が気持ちいいなあ、天嘉。」 「うん、」    蘇芳の背に腕を回しながら、嫁の声は少しだけ震えていた。それでも、片手を優しく腹に添えて撫でているから、蘇芳はなんだか嬉しくなって何も言わないままギュッと抱きしめた。   

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