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なんで止まってくれないの **

 天嘉は、口にはしないが見下されるのが好きだった。こうして視界が蘇芳でいっぱいになるのも、長い黒髪が檻のように天嘉を閉じ込めるのも、そして、蘇芳のその場所を確かめるかのように、背中の印に触れるのも。  なんだか揺蕩う水の上で寝転んでいるように心地がいい。足の間に蘇芳がいて、天嘉の大好きな香りを纏いながら、その大きな手で頬を撫でられている。  なんでか、お腹が気持ちがいい。全部が全部ふわふわとしていて、蘇芳にもっと近づいて欲しくて、両手を伸ばして引き寄せる。 「可愛らしい、」 「こ、っち…」 「こうか?」 「うん…」  蘇芳の顔が首筋に埋まる。天嘉がこうしてほしくて誘導した。首筋と、肩につながる傾斜の部分。ここを噛まれたり舐められたりすると、神経が甘く痺れるのだ。この感覚は、気持ちが良くて素直になれるから好きだった。 「ここ、ここかんで…ほし、」 「煽るな、お前は全く質が悪い。」  可愛い、笑っている。蘇芳は、今ご機嫌なのだ。きっと犬のように尻尾を降って喜んでいるんだろうなあと思っていたら、腰のあたりがじんわりと暖かくなってきた。蘇芳によって首に優しく齒を立てられて、雌の体が喜んだのだ。 「ふふ、お前は俺を喜ばせる天才だなあ。どれ、もっと足を開いてはしたない所を見せて見ろ。」 「う…?な、にい…んえ、あ…」  だらしなく足を開かされ、ふわふわとしたまどろみの中に閉じ込められた天嘉は促されるように下肢をみた。見たと言っても、腹が邪魔して見えないから、実際は布団なのだけれど。  こぶりな性器から、しょろしょろと漏らしていた。やけに温かくて気持ちがいいと思っていたら、蘇芳に噛まれたことが嬉しくて、漏らしたらしい。  尻の下をぐっしょりと濡らしながらも、ぼんやりとしたままの天嘉は、きっとこれは知らないシーツだし、夢の中なのかもしれないなあなんていう現実逃避をして、まどろんだ瞳で蘇芳を見上げる。 「構わん、ここはそういう事をする場でもある。俺に存分に素直な姿を見せてみよ。お前はまだまどろみの中にいるのだからな、恥ずかしいこともないさ。」 「ふぁ、ん…ぅ、ん…あ、っ」  甘く耳を噛まれる。これも好きだ、どうしよう。天嘉が好きなことを沢山してくれるから、なんだか贅沢な時間だなあ。と、そんなことを思った。蘇芳の広い背に手を回し、はむりと肩口を甘噛みする。天嘉が気持ちがいいから、蘇芳も好きだろうと思ったのだ。 「こら、戯れるな。」 「すき、じゃない…の?」 「お前は好きなのか?」 「おまえに…噛まれるの、すき…」 「………そうか。」  腰が震えた。蘇芳が天嘉の首筋に顔を埋めて、その小ぶりな性器を袋ごと柔く握るのだ。大きな熱い手のひらがそっとそこを包む。漏らしたばかりで濡れているのに、気にしないでふにふにと弄るせいで、天嘉の腰はだらしなく揺らめいてしまう。 「あ、あ、あ、っ…や、やら…へ、変…っ、」 「変ではないさ。気持ちがいいだろう。ほら、固くなってきた。」 「や、やだ…ぁっ、んんっ、」  じんわりと先走りが蘇芳の手のひらにねとりと触れると、とろとろと零れるそれを指に絡めて天嘉の自慰を手助けする。  決めの一手にかけた天嘉の、情けない腰の揺らめきを手助けするかのように、蘇芳がにゅちにゅちと音をたてて先端を摩擦する。おかげで、天嘉のなけなしの本能が刺激されて、下手くそに蘇芳の手の内に擦り付けるように恋を揺らしてしまう。  天嘉は赤らんだ顔で、はふはふと荒い呼吸を繰り返しては、心許ない手元を慰めるかのように、蘇芳の着物の袖をきゅぅっと握りしめてぐずるのだ。   「はあ、お前は全く、本当にたまらん。」 「う、ぅー…、っ…」  蘇芳が天嘉を覗き込む様にして見下ろす。口付けをするのだろうかと思わず目を瞑ると、ぐう、という妙な声を出した後、噛みつくような口付けをされた。  蘇芳からしてみたら、本当は意地悪なことの一つや二つを言ってやろうという心積もりであった。しかしながら、こうも嫁に期待されては無理もない。抗えという方が無理なのだ。なんだこの可愛さは、よくここまで無事に生きてこられたと、思わずそんな馬鹿なことを考えてしまうくらいには、蘇芳は内心で悶絶していた。   「ふぅぁ…、う、う、んむ、っ…っ…」    肉厚な蘇芳の熱い舌が、天嘉の口の中を蹂躙する。唾液を飲み込ませ、細い首に手を這わす。このまま、首を絞められてしまうんじゃないかと思うくらい、ねっとりとした手つきで細い首筋を押さえられ、人差し指の一本のみで顎を持ち上げられる。  ああ、気持ちがいい。この口付けは、頭が馬鹿になってしまうやつだ。  天嘉は琥珀の瞳に涙を含ませながら、飲み込み切らなかった唾液を零して口付けに答える。唇の隙間から僅かに見える舌と舌が擦れ合って、プチュリと唾液が弾ける音がする。互いの味蕾を擦り合いながら、天嘉も何も考えられないままに蘇芳の舌を舐めしゃぶる。    こんなはしたない口付けを天嘉に教え込んだ悪い大人は、楽しそうに時折口元に笑みを浮かべながら、舌先を甘噛みして胸の突起を優しく抓る。   「ひ、んっ…!」    胸の先が痺れて、ぷしりと何かが細い糸のように噴き上げた。   「へ、ぁ…っ、や、やだぁ…」 「下も粗相をしたのだ。今更乳が噴き出たとてかわらんだろう。それに。」 「ぁ、あ…う、嘘…」    天嘉は口付けに翻弄されて気が付かぬままに、腹の中に蘇芳の指を含ませていた。一体いつから飲み込んでいたのだろう。本当は寝ぼけた天嘉が腹の中が気もちいいと感じていた時点でこなれた穴に仕上げられていたのだが、そんなことは全く思いつきもしなかった。   「ほら、天嘉、声を出せ。」 「ぁあ、あっ、あ、あ、や、そ、そこ、はぁ…っ、」    中指と薬指でぐいぐいと内壁を押されると、天嘉の腰はひくんと揺れてしまう。たった指二本だけで腰を持ち上げられているみたいだ。蘇芳は興奮しているらしい。美しい黄昏色の瞳を猛禽のものに変化させていた。   「ゆ、指、ぇ…っい、いぎっ、たぐ、な…っ、」 「だめだ、イけ。」 「ひっ、す、すぉ…あ、あー…っ!やだっ、いや、ら…イぅ、あ、あ、あっ!」    嫌だ、指でなんかイきたくない。こんなところで達してしまったら、いよいよ雌として出来上がってしまう。天嘉は顔を真っ赤に染め上げながら、荒い呼吸を繰り返して嫌だと首を振る。足の指が快感の逃げ場を探してシーツを手繰り寄せる。そんな具合に蘇芳の手練手管に翻弄され、必死に髪を乱して逃げようとすれば、蘇芳は泣き喚いて感じる天嘉をうっとりと瞳に閉じ込める。   「ひ、い、イっ…ぐ、ぅあ、あっあー…!」 「おっと、」    もうだめだと思った。プチンと神経の一つが焼き切れてしまったかのように、寝湯がじんわりと頭に広がって、天嘉は全身の性感帯を震わせながらのけぞった。  蘇芳の指先が一際強くしこりを押し潰したのだ。おかげで天嘉はその身をしびびっ、とざわめかせる。目の前が弾けて、光が散って、そしてあらゆる先端に血流を巡らせると、天嘉は間欠泉のように勢いよく精液を吹き上げたのち、蘇芳の指をキツく締め付けながらびしゃびしゃと潮まで吹いたのだ。   「っぁ、は…あ、あ、はぁ…っ、はぁ…っ…」    百メートルを全力で走ったかのような体感疲労だ。肺がひゅうひゅうと音を立て、新鮮な酸素を取り込んでいるはずなのに、頭が回らない。  布団の上を盛大に汚しながら、天嘉は身を投げ出していた。心地いい。このまま、意識を手放すことが出来ればどれだけ気持ちがいいだろうか。だらしなく唾液を垂らしながら、虚な瞳は天井を映していた。  放心状態だったから、だから蘇芳が天嘉の膝裏に手を回したことにも気が付かなかったのかもしれない。   「ーーーーーーっぁ、あ゛あ゛!」 「く、はは…っ、すご、いな…」    腹にズドンと重いものが侵入してきた。内壁のいいところを全部こそげとるような荒々しい挿入に、天嘉はだらしなく唾液を吹いてしまった。   「あ、あ…ひぅ…っ!」    蘇芳の性器は重く、そして熱く張り詰めている。滲んだ先走りが妖力を含んで腹の中に塗り付けられている。まるで媚を売るような内壁の動きを感じながら、蘇芳は腰をぐいぐいと深く押し付けて、天嘉の腰を浮かせるほど密着した。   「気持ちが、いいな…っ…ん、すぐに、イきそうだ…。」 「は、は、…ッツふ、んン…ぃ、あ、…」 「おい、上を向くな。瞳はこちらに向けていろ。」    蘇芳の声に、飛んでいた天嘉の意識が徐々に戻ってくる。茹だった思考の中、ゆるゆると視線を向けると、腹のせいで結合部は見えなかった。それでも、結腸はとうに抜けている。尻の滑りがいい。さらさらしているのに、ぬるついてもいる。粗相と精液が混じってできた潤滑油のようなものが、蘇芳の動きを助けてしまう。   「も、…やぁ…っ…、」 「抜き差しもせぬまま終えるわけがないだろう。まだ寝ぼけているのか?」 「ひ、ぃ…あ、あ、あ、…」  足を抱え上げられ、膝に口付けられる。蘇芳が優しく労るように腹を撫でた後、がじりと膝をかじられた。  ああ、逃げられないな。天嘉は小さな喉仏をコクリと動かすと、まるで手慰みのように枕をキュッと握りしめた。      

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