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第4話
「あと1回、1回だけでいい……やってみてくれませんか?」
2回目の惨劇のあと、再び原因究明のための調査が行われようとしていた。
その調査の中には、複数の先生や外部の研究者達の前で、僕が召喚して見せることも含まれていた。
でも僕はそれを断ろうとした。
これ以上魔物を死に追いやるのは、殺してしまうのはもう嫌だった。
耐えられなかった。
魔物を殺さずに済むのなら、もう召喚術の授業も召喚もできなくていいと思った。
「y君は魔物と関わるのが好きなんでしょう?
1年生の時から、座学だってあんなに熱心だったじゃないか…
…先生は凄くもったいないと思うんです。
こんなにも早く、君の可能性の一つが閉じてしまうなんて………」
召喚術の担当教諭は、学校中からサイコ扱いをされている僕に優しく語りかけてくれた。
眼鏡をかけた顔立ちや額にかかる髪と同じように、物腰の柔らかい先生。
「それに…
ごめんね、ここからは先生や学校側の都合も入る話なんですが…」
学校は例の現象は原因不明のため、現時点では僕だけでなく他の人間でも起こるまたは伝播する可能性も0ではないと見ているそうだ。
「y君の時とは逆に、もし召喚を行った人間側に”あれ”が起こってしまったら……
そんな事は何としても防がないといけないんです。」
他の生徒の安全確認のためにも、詳しい原因調査は必須。
それまでは学校全体の召喚行為を制限されることになったそうだ。
(僕が拒否し続ければ、先生にも学校にもみんなに迷惑がかかる…)
召喚術は人間にはない大きな力を使うことができる一方で、危険を伴うものでもある。
もう状況は、個人の問題には収まらなくなってしまったのだ。
「…っ………………」
また魔物を死なせたくない…殺したくない。
でも自分一人の都合を押し通し、多くの人に影響を負担を与え続ける訳にだって、いかないだろう。
(仕方ないんだ…これは、どうしようもないことなんだ…。
それに、)
どうしようもないことが降りかかることを、僕は前から知っていたじゃないか。
「…………」
また魔物を死なせてしまうかもしれないのに結局、再び召喚することを選んだ自分。
そんな僕を攻めるかのように時折、脳裏に青い蝶や灰色のリスの姿が蘇る。
そして彼らの最後の姿も。
――もう彼らは存在しない。
だが僕が一番気にしなければいけなかったのは、自分が殺した彼らではないのか?
「ッッッ…!!」
そうやって思い出してしまうたび、僕は自分が情けなくて、消えてしまいたくなった。
辛くて苦しくて、全てなかったことにしてしまいたくなった。
彼らのことを考えずにすむように、逃げたかった。
(僕が今できること、すべきことは何だ…?)
原因ではないかと言われた「供給魔力が不安定になること」を防ぐため、僕は精神統一や魔力を安定させる訓練に精を出した。
1回目の事故以降も力を入れてきたが、さらに訓練の時間を増やすことにした。
万が一のために、召喚魔術を素早く取り消すための練習もそれに加えた。
魔物の召喚術に似ている魔術、物を召喚する魔術で代用し、必死に解消魔術を練習した。
とにかく早く確実に打ち消せるように。
魔物に異変が現れたらすぐに、召喚魔術を取り消せるように。
僕は自分ができることに意識を向け、それにひたすら没頭した。
魔物を殺した罪悪感や、どうしようもない現実から目を背けるように。
それが今までも、自分の心を守る手段としてきた事だったからだ。
1年後――
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