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05:ガチめのピンチ
下着と作業着を押し上げるソレは、もはや正直痛いくらい。
指圧されるのに気を取られていた俺は、そんなことにも気づけなかったみたいだった。
……どうやって切り抜けば。
こんなのバレたら、さすがの爽やか兄ちゃんでもドン引きだ。
それ以前に警察呼ばれる。
「どうかされました……?」
心配そうな声が頭上から降ってくる。
きっと表情も、同じような顔してるんだろうってことが容易に分かる、優しそうな声。
「いや、大丈夫です……」
俺には、身体全体を覆い隠すほどの大きなタオルケットがかけられている。
膝を少し曲げて寝転べば、多分、バレない。
まだ完勃ちまでは、いってないはずだし。
なんだかセクハラしてる犯罪者の気分になる。
男にセクハラとか、絶対しねぇけど。
よく分からないが、罪悪感、みたいなものが俺のなかに渦巻く。
頭でぐるぐる考えつつも、俺は兄ちゃんの視線をヒシヒシと受けながら、体勢を仰向けにして横たわった。
衣擦れの音しかしないのが気まずい……。
「それでは、失礼します。力は抜いていてくださいね」
「……? はい」
何をするのかと思い、視線を下に、自分の足許に向ける。
やつはおもむろに、膝を立てた状態の俺の足を掴み、左右に開いて、その間に座ったかと思えば。
──膝裏を持ち上げ、胸につくくらい、足を上げたり下げたりを繰り返しだした。
「……っ、!」
ちょ、それはっ、ちょっと、バレるっ、バレるってぇ……!
まるで正常位のような格好に内心慌てふためく俺の、唯一の救いがタオルケット。
これがあるから、視界には入らないだろうし、最後まで気付かれない可能性だってまだ充分にある。
そう自分に言い聞かせても、不安なのは不安だ。
勃起してるのがバレないか心配で、もうそれしか頭に浮かばない。
さっきまではマッサージに集中して、とろけるような気持ちよさにただ身を任せながら、また来ようかなぁ、とか、呑気にふわふわ考えていられたのに……。
「……っん、……っふぅ、ッ」
赤面するほど足を開脚させられたりして、しかもそれが丁寧な愛撫みたいにゆっくりで、モノを勃たたせていることを抜きにしても、恥ずかしくなる。
も、はやく、早く終わってくれ……。
焦りと羞恥から、さっきとは打って変わって、俺はそんなことを思うようになっていた。
「右足のほうが軟らかいですね、こんなに上がりますよ」
言いながら、体重をかけてぐーっと足を胸につけられる。
なんでもいいから、この格好が気恥ずかしくて仕方ない。
顔が近くなるし、兄ちゃんの足が俺のケツに当たるし、急に体勢を変えたせいか、何故か息子は更に反応し出すし、もう気が気じゃなくて。
せめてこれ以上は、何も起きず、無事に終わりますように。
──そんな俺の願いは、儚くも砕け散った。
マッサージする時は、基本的に直接は触られない。
それは、俺とやつの間をタオルケットが隔ててあったから。
なのにその唯一の救いが今、兄ちゃんの手によって、邪魔そうにずるりと取り上げられてしまった。
男同士だし、別にタオルなしでもなんてことはない。
でもそれは、俺がモノを勃たせてなければの話だ。
「っ、!!」
人生最大のピンチかも知れない。結構ガチで。
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