5 / 36

05:ガチめのピンチ

 下着と作業着を押し上げるソレは、もはや正直痛いくらい。    指圧されるのに気を取られていた俺は、そんなことにも気づけなかったみたいだった。  ……どうやって切り抜けば。  こんなのバレたら、さすがの爽やか兄ちゃんでもドン引きだ。  それ以前に警察呼ばれる。   「どうかされました……?」  心配そうな声が頭上から降ってくる。  きっと表情も、同じような顔してるんだろうってことが容易に分かる、優しそうな声。     「いや、大丈夫です……」  俺には、身体全体を覆い隠すほどの大きなタオルケットがかけられている。    膝を少し曲げて寝転べば、多分、バレない。  まだ完勃ちまでは、いってないはずだし。    なんだかセクハラしてる犯罪者の気分になる。  男にセクハラとか、絶対しねぇけど。    よく分からないが、罪悪感、みたいなものが俺のなかに渦巻く。  頭でぐるぐる考えつつも、俺は兄ちゃんの視線をヒシヒシと受けながら、体勢を仰向けにして横たわった。  衣擦れの音しかしないのが気まずい……。   「それでは、失礼します。力は抜いていてくださいね」 「……? はい」  何をするのかと思い、視線を下に、自分の足許に向ける。    やつはおもむろに、膝を立てた状態の俺の足を掴み、左右に開いて、その間に座ったかと思えば。 ──膝裏を持ち上げ、胸につくくらい、足を上げたり下げたりを繰り返しだした。 「……っ、!」  ちょ、それはっ、ちょっと、バレるっ、バレるってぇ……!    まるで正常位のような格好に内心慌てふためく俺の、唯一の救いがタオルケット。  これがあるから、視界には入らないだろうし、最後まで気付かれない可能性だってまだ充分にある。  そう自分に言い聞かせても、不安なのは不安だ。  勃起してるのがバレないか心配で、もうそれしか頭に浮かばない。    さっきまではマッサージに集中して、とろけるような気持ちよさにただ身を任せながら、また来ようかなぁ、とか、呑気にふわふわ考えていられたのに……。   「……っん、……っふぅ、ッ」  赤面するほど足を開脚させられたりして、しかもそれが丁寧な愛撫みたいにゆっくりで、モノを勃たたせていることを抜きにしても、恥ずかしくなる。    も、はやく、早く終わってくれ……。  焦りと羞恥から、さっきとは打って変わって、俺はそんなことを思うようになっていた。   「右足のほうが軟らかいですね、こんなに上がりますよ」  言いながら、体重をかけてぐーっと足を胸につけられる。    なんでもいいから、この格好が気恥ずかしくて仕方ない。  顔が近くなるし、兄ちゃんの足が俺のケツに当たるし、急に体勢を変えたせいか、何故か息子は更に反応し出すし、もう気が気じゃなくて。    せめてこれ以上は、何も起きず、無事に終わりますように。 ──そんな俺の願いは、儚くも砕け散った。  マッサージする時は、基本的に直接は触られない。  それは、俺とやつの間をタオルケットが隔ててあったから。  なのにその唯一の救いが今、兄ちゃんの手によって、邪魔そうにずるりと取り上げられてしまった。    男同士だし、別にタオルなしでもなんてことはない。  でもそれは、俺がモノを勃たせてなければの話だ。   「っ、!!」  人生最大のピンチかも知れない。結構ガチで。

ともだちにシェアしよう!