14 / 36
14:我慢したくない
だらだらと涎を垂れ流す自身は、実は突き入れられた時からほとんど放置されていた。
太ももや尻や背中には愛撫してくるくせに、わざとそこだけ外してるんじゃないかと思っていたが、実際は分からない。
後ろからの刺激にぴくぴくと反応するモノを慰めたくて、俺は自分のそれにゆっくりと手を伸ばす。
「……まだ、だめですよ」
自身に向かっていた手首をガシッと掴まれたかと思えば、耳許で咎めるように低く囁かれて、ギクリと心臓が跳ねた。
「っあ、ぁ……も、いやだぁ……」
お願いだ、触らして。
胸と後ろだけでも充分気持ちいいし、ちんこまでぴくぴく動いて喜悦の声を上げている。
……でも、それだけじゃ無理。
さすがに前を扱かないと、イけない。
「っうぇ、やぁ……」
これ以上我慢を強いられるのは限界だった。
触りたくて、気持ちよくて、でも物足りなくて。
そう思う自分が浅ましくて情けなく思うのに、衝動は抑えられない。
色んな感情が混沌して思考がぐちゃぐちゃだ。
だから余計に、なりふり構わず恥ずかしい台詞を言えたんだと思う。
「もっ、触りたい、ぐちゅぐちゅして、ぁっ……ぅ、イきた……っ」
ぐす、とうつ向いて鼻をすする俺に兄ちゃんは仕方ないですねぇ、と呆れたように呟く。
相手の名前を呼ぼうとして、ふと、俺は、この人の名前すら知らないことに気付く。
そんな初対面の男にこんなことを許してるなんて、尻軽女か……。
いや俺、男だけどさ。
まあ、尻だけに。とか、つまんねぇよな。
「っはぁ、あ……っま、え……」
「……なんです?」
「な、まえ……教え、てっ」
「ふふ、今それ言います? 遅いでしょ」
こんな時だって言うのに、兄ちゃんは情事が見え隠れする色っぽい表情で、だけどおかしそうに笑った。
うるせえ、俺だって今更だとは思ったよ。
もう少しタイミング考えろよ、ともな。
けど、気になったんだから仕方ない。
名前すら知らないやつに犯されてるなんて嫌だし。
「僕は、坂田って言います。坂田祐介」
さかた、ゆうすけ。
名前が分かった瞬間、何故か一気に親近感というか、心に残っていた不信感みたいなものが消える。
なんだ、この気持ち。
「っあ、ゆ、すけ……ッ」
「……っ、急に名前呼ばれたら、なんか凄いキますね」
ああ、分かるかも、なんとなく。
でも、名字ってのもなんだか他人行儀だし、煽ってしまったなら申し訳ない。
まあ俺も、杉村さんって言われるより、ちゃんと名前で呼ばれたほうが嬉しいけど。
「っぁ、あぅ、ゆう、すけ、もう……触ってい……?」
「もう少しだけ、待って下さい」
「やっ、も、我慢したくな……ッひぁぁあ゙!」
ぐりゅん、と身体が反転した。
膝の裏を持ち上げて、肩にかけられる。
顔の横に手がついた。
急に体位が変わったせいで、祐介のが当たる角度も変わって、俺のイイトコロに亀頭の硬く出っ張った部分が引っかかる。
「っあ、だめ、ぁひ……ん、んぁあ……っ!」
くりくりと器用に乳首をつねられて、ビリビリした電流みたいなものが全身に駆け巡る。
強い快感、耐えられなくて、紛らわすように俺は祐介の首に腕を絡めて、びくびく痙攣しながら抱きついた。
ともだちにシェアしよう!