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15:精一杯の
「──確か、杉村さんの名前は達也でしたよね。気持ちいいですか、達也さん」
「あぅ、ひぃ、ん……っ」
こくこくと首を縦に振る。
もうちゃんとした言葉さえ出てこない。
最早俺の口から飛び出すのはいやらしい喘ぎ声だけで、思考だってもう、まともに働かない。
向かい合った距離が近い。
正常位、実はこれが一番恥ずかしくて興奮することに気づいた。
ぴちゃ、と音を立てて耳を舐められて、それは顎まで下降する。
ちろちろ動く舌はただただえろくて、扇情的だ。
善すぎて、肌が栗立つ。
「っあん、おねが、もう……っやめ、て……ッ!」
ケツでこんなに気持ちよくなれるものなのか。
小さな乳首も赤く尖って、色づいた肌が汗ばむ。
自分の身体なのに、卑猥に見えた。
ガツガツと突かれながら色んなところを触って舐められて、強すぎる快感がつらく思えてきた俺は、涙ながらに訴える。
「……いいんですか? やめても。僕はあなたの言うことを正直に聞きますよ」
耳許で悪戯に囁かれて、ぱくりと軟骨を食まれた。
舌が動くたびに唾液のやらしい音がして、それにも煽られる。
意地悪な台詞だ。
今やめられることが、俺にとって拷問のようにつらいことだって、分かってるくせに。
「いや、いやあ……っ」
どうすればいいんだ。
気が狂いそうな悦楽を拒む自分も確かに居る。
だけど、もしほんとにやめられたら、俺は本気で泣き出す自信が確実にある。
「……言って、僕にして欲しいこと、命令してください」
吐息が耳に当たって、その言葉と声の甘さに、ふるりと身体が小さく身震いする。
命令……。
そう思えば、自分から懇願するよりはまだ気持ち的に楽だ。
立場が優位になっているように感じて。
実際は、その逆なんだけど。
焦れったくて、さっきまでは触れていた熱い手が、唇が、狂いそうなほどの快感が欲しくて、俺は祐介の後頭部を引き寄せて、自分からキスを仕掛けた。
「っん、ぅ……」
「……っ、」
舌はさすがに突っ込まない。
触れるだけのキスはすぐに離れて、ゆっくりと祐介を見上げる。
なんだか勢いでしてしまったけど、やつの顔は唖然としていて、俺にまで恥ずかしさが込み上げてくる。
「っ……ぁ、えと……」
言葉が見つからない。
頬を染めて目線をうろうろと泳がす俺に、祐介は緩慢に腰を揺らした。
「っひ、うぁ……あ、」
「やらしいですね……、ほんとに初めてなんですか? 男煽るのうますぎ」
「っくそ、うるせぇ……っばか、やろ……ッ」
そんなこと言われても、俺は自分の言動が、自失しかけてるせいか何をしてるのかよく分かっていなくて、ただ悔し紛れにそう悪態つく。
無意識なんだよ。誘ってる自覚はあるけど、何をすれば煽ってしまうかなんて、俺はそこまで考えてない。
「っも、たのむ、からっ……俺の、なか…掻き回して、イかせろよ……っ」
頭のなかを占めるのは、はやくイきたいって、もうそればっかりで。
祐介の首の後ろで腕を組んで、ゆらりと腰を揺すった。
ナカに入ったその熱いので、思いっきり突き上げて、もう一度あのしこりをゴリゴリ擦って欲しい。
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