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16:融解

 羞恥心の欠片が邪魔してそこまでは言えないから、態度で表す。 「……分かりました、動きますね」 「っぅ、ん」  奥まで入っていたそれを、ずるずると抜かれて、ゆっくりとした動きで律動が開始された。 「は、ぁ……あっ」  下から響く、ぐちゃ、とか、ちゅく、とかいう生々しい音の間隔がはやくなって、どんどん激しさを増していく。  うやむやにされていた快楽を、やっとちゃんと与えられて、俺の後孔はもっと欲しいとでも言うみたいに、ひくひく収縮してナカに誘い込む。 「ぁ、う……いやぁ……っん」 「嫌って言われちゃうと、やめなきゃならなくなりますよ?」  嫌がることは出来ないので。と、やつは至極楽しそうに笑った。    それは、絶対やだ。  だってやっと、快感を得られたのに。   「じゃあ、どうしたら……ッ」 「素直に言えばいいんですよ」  縋るような視線を向ける俺に向かって、祐介は無害そうな表情でにこりと微笑む。  優しそうな顔をしてるくせに、性格は真逆らしい。    でもそんなことを考える余裕なんかすぐに消え失せて、激しくなる一方の抽送に、俺はびくつきながら悶える。    理性が焼き切れる感覚がした。 「ぁ、き、もちぃ……っあ、ぁあ……っ!」  硬く張ったカリで前立腺を突き上げられて、目の前がチカチカした。  強すぎる快楽に身体が小刻みに震えて、わけも分からず祐介にしがみつく。  華奢に見えた背中は意外と広くて、しっかりしている。  やっぱり男なんだ、と今更ながら実感したけど、今はそれどころじゃない。   「ぁ、も、触ってい……っ? イきた、い……ッ」 「いいですよ、っ」  兄ちゃんもそろそろヤバいのか、艶っぽい顔をしている。  やっとの思いで承諾を得た俺は、右手で自身をおそるおそる握り込んだ。    待ち望んでいたはずだった。  なのに、手に全然力が入らなくて、無情にも、指先は先走りにまみれたそこを弱く滑るだけ。    もどかしくて、恥を忍んで、俺は両手を使ってモノを扱き上げた。 「あっ、ぁあ……っん、ひぁ!」  揺さぶられながら、痛いくらいに自身を擦り上げる。  尿道口にぐりぐりと親指の腹を押し付けて、睾丸まで左手で揉み込んだ。    徐々に気持ちが高ぶって、絶頂へと駆け上がっていく。 「あ、だめぇ……ッあぅ、んっ!」 「っ、そんなに、締め付けないで下さい」  律動の激しさが増す。  ぐちゅぐちゅと響く音の間隔が徐々に狭まって、兄ちゃんの余裕のなさが伝わってきた。    足を担がれて、最奥を穿つ。  男のフェロモンたっぷりの色気のある表情で俺に覆い被さってきた兄ちゃんは、べろりと首筋を舐め上げた。   「っあ、ぅああ……ッも、イっちゃ……っ!」  ちゅぷりと耳まで舌が這って、熱く柔らかいそれにぞくぞくっと背骨から脳髄にまで痺れる感覚。    善すぎてつらいのに、自身を扱く手は更に速くなる。  足の先がきゅう、と丸まって、それとは逆に背中が仰け反った。   「……イって下さい、達也さん」 「やぁ、ひ、ぁ、あっ、ぁあ……ッ!」  後頭部を枕に擦り付けながら、じゅくじゅく音がするくらい俺はモノを痛いほどに握って扱き上げた。    下腹部がひくひくと切なく震える。 ……限界が、近い。 「ぁ、ぁ……っゆ、すけ、ゆうすけ……ッイ、く……っひぅ、ぁああ゙……──!」 「……っ!」  びくんっ、と大きく身体が跳ねた瞬間、自身から沸き上がってくるみたいに、びゅるっと勢いよく白濁が迸った。    それは祐介の頬を汚して、俺の肩にまで飛び散る。   ……もう頭んなか、真っ白。

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