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02:人見知りレベル

 黒い重厚感のある扉には長方形の華奢なシルバープレート。読めない華奢な英字で店名が書いてある。  その横のインターフォンを押した。   「いらっしゃいませ。九重様、杉村様」 「お久しぶりですね」 「あ、お……、お久しぶりです」  最初に俺たちを出迎えてくれたのは店長だった。  その後ろ、受付にいたのは俺の担当の四ノ宮。  いつもの茶髪ロングのきれいな女性は、今日はいないようだった。    店長を──、そして四ノ宮へ視線を移して、ペコッと頭をさげる。    最初に誤解のないよう言っておきたいのだが、俺は昔からめちゃめちゃ人見知りで、慣れると問題ないが、またしばらく顔を合わせないと人見知りレベルがフリダシに戻ってしまう。    初めて来たときと同じように、緊張で顔が強ばる。  店内に足を踏み入れながら、少し後悔した。   「今日もお勤めご苦労さまです。あ、お荷物は僕がお持ちしますね。達也さんはどうぞ、こちらへ」 「……なんか、雰囲気変わった?」 「ふは、分かります? 実は昨日、髪を切ったところです」 「俺もそろそろ切らないと、伸びてきたわ」 「達也さんは長めの髪型もお似合いですけどね」  店長とたっちゃんは和やかに会話しつつ、先に流れるように店の奥へと向かっていった。    いつの間にかめっちゃ仲良くなってるな?と、その後ろ姿を茫然と見送っていると、カーテンの奥へ消える間際、ふとたっちゃんがこっちを振り返って、 「……あっ、ココ。ココも60分コースだよな?」 「え? あ、あぁ、うん」 「俺も同じ。じゃあまた」 ……おう。と、返事をする前に、彼らはとっととふたりでカーテンの奥へと消えてしまった。 「──九重さん、」 「ッうあっ?!」 「あ、すみません。驚かせるつもりは……」 「い、いや……こちらこそ申し訳ない」 「……では、こちらへ」  少し笑った四ノ宮に促され、俺もあとを追うようについて行った。    病院の大部屋のようにベッドはそれぞれカーテンで仕切られている。  一番奥には店長とたっちゃん。    ふたりのいるベッドの隣に案内され、荷物といっても小さな黒いボディバックをベッド下のバスケットに入れて。  固くも弾力のあるベッドに腰かけ、ゆっくりとうつ伏せになった。    間接照明の店内は薄明るく、どこからかジャズっぽい音楽と、アロマっぽい柔らかな甘い香りがする。  どれも詳しくないから分からんが、以前の慣れてるときならリラックスできていたのに、今はそれらが緊張の材料にしかならない。   「……お久しぶりですね、九重さん」 「あ、あぁ。二ヶ月はたってるか?」 「前回から三ヶ月はたってますね」 「そんなに?」 「はい、そんなに。お身体の調子はいかがですか?」  四ノ宮の、優しく笑う気配を背中に感じる。  ドーナツ型のクッションに顔を埋め、目をつむると、視界は真っ暗になった。

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