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07:望んでたわけじゃない、はず

 その顔を唖然として見上げると、唇から離された指先が、割れた腹筋の溝をなぞり──、臍のくぼみに触れ、手のひらが下腹部をつたって。    もうひくついて止まらない腹筋の下、さらに敏感なところを、下着の上からグッとわし掴んだ。 「ッぁあ……っ!?」  びくんっ、と腰が跳ねる。 「静かに、って……言ったのに」 「ぁ……っ、あ……、なん、で、なんで……っ?」  意味が分からない。  分からないのに、身体は動かない。  抵抗、できない。    だって、だって、いつも四ノ宮は、なんの感情もないような顔をして、機械的に施術するだけで。  俺はただ身を任せているだけで、いつも、毎回、気持ちのいいことを、される、だけで。 ──今まで、四ノ宮からは、快楽しか、与えられたことがなくて。  受け入れる、癖がもう、ついてしまって……いる。 「まだ解れていないところ、ありましたね……」 「……っ!!」  下着の上から、中途半端に勃ったものを揉むように扱かれる。  その刺激にぞくりと背筋が痺れ、驚いて、ガバッと勢いよく起き上がる。 「っ、は、ぁ……ッ、か、帰る……っ」  四ノ宮に背中を向け、今度こそベッドからおりようと足を投げ出す──前に、後ろから、熱い身体で抱きしめられて。    耳の後ろに唇が触れる。  低い声が、鼓膜の奥まで注ぎこまれた。 「……帰るなんて、言わないで」 「っんぁぁ……ッ」  開かれた作業着の合わせをぎゅうっと掴んで、震えながら唇を噛みしめる。    だめだ、だめだ。こんなこと。おかしいだろ。  男同士だぞ?アラサーだぞ?  こんなナヨナヨしたきれいなやつに、四ノ宮に、ここまで面倒をかけさせるわけにはいかない、のに。  後ろからまとわりつく腕は、見かけ以上に逞しく、力強い。   「騒ぐと隣に聞こえちゃいますよ?」 「……っん、く……」  手の甲で口許を覆い、自分の指を噛むと、くぅん、と子犬のような声が漏れた。    どうしよう。どうしたら……。  動けない。拒絶できない。    身体はもう、こいつを受け入れたくて仕方なくって、これ以上のことをしたら自分はどうなってしまうんだろうって、そう、期待してる。 ……でも、だけど、こんなの……、だめなのに。 「……大丈夫です。ぜんぶ俺に任せてください」  耳許で低く囁かれ、吐息まじりのそれが、脳髄までをも震わせる。    じり、と焼けつくような甘美な火種が、腰の奥に這いずった。

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