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09:理性が邪魔する

「……っ?!、ぃ、ぃやだ……っ、そんな、つもりじゃ……ッ」 「あは、ハジメテみたいな反応しますね」  ハジメテなんだけど……っ?!  これはなんか、とんでもない誤解をされている気がする。    言わなくては。言って、誤解をとかなくては。  そう思うのに、自身への手扱きがくちゅくちゅ卑猥な音がするほど激しくなって、背骨をかけあがる快美に、ぞくぞくと呼応してしまう。 「あっ、あっ、ぁあッ、だめ、だめだってぇ……っ」  ぬめりをまとった指先が、きゅっと閉ざされたそこを開くために、くすぐるように触れて。  やんわり、少しずつ、だけど確実に、懐柔されていく。 ……ほんとに、ほんとに初めてなんだ。  そんな、尻の穴を他人に触られるなんて。    今だって、全神経がそこに集中して、初めての感覚にどうしていいのか分からない。  触れた穴がヒクヒクといかがわしく開閉するのは、ただ混乱していて、自分で意識してやってるわけじゃない。    もうなにを言って、どんな顔をしているか、とか。  そういうのも全部、気にしてる余裕がなくて、頭が変になりそうだ。  ぐにぐにと解し、ぬめりをまとった指先は今にも侵入してきそうで、腹のナカが熱く、じわりと疼く。 ──揉みほぐされて、弛緩した身体は、後孔は。   「やぁっ、あァ、あぁぁ……っひぁぅんッ!?」 「ふは、すごい声……」 「っあぁぁ゙……ッ、やだぁ……っ!」  ぐっ、とさらに力を込めた四ノ宮の指を、ぬぷぬぷと、あっさり受け入れてしまった。 「あぁほら……。そんなに大きな声を出すと、丸聞こえですよ、お隣に」 「……っ、ぁ、ぁ……ッはな、して、はなせぇ……っ」  弱々しく四ノ宮の腕を掴む手は、もはや抵抗というよりも、助けてほしくて縋りついているようだった。   「あー……、でもいっそ、聞かせてあげます? さすがにこちらの声が聞こえたら、向こうのも聞こえてるって、分かるんじゃないですか?」 「──……あっ、ぁあッ、イイっ、イイッ、そこ、そこぉ……ッしんじゃうぅ……っ、!」 「──っ?!」  唐突にたっちゃんの叫ぶような嬌声がして、ハッとした。  一気に現実に引き戻された気持ちだった。    俺……っ、自分の声なんて、全然、気にもとめていなかった。  それどころか、たっちゃんの声さえ、言われるまで気がつかないほどで。    今さら羞恥心がぶり返し、自分の痴態を恥じ入るように、うつ向く。 「──きもちぃ、あっ、ァあ……ッ、きもちぃの、そこ、もっとぉ……っ!」 「……ま、“あちら”は、そんなことお構いなしって感じですけどね」 「……っ、」 「九重さん、こっち見て」 「?」 「……指、ナカに入ってるの、分かりますか」 「ぇ……、ぁ……っ」  そうだ。入って、しまったんだった。  痛みが全くないのは、馴染むまで無理に動かさないようにしてくれていたからだ。 ……でも、意識したら、その違和感と圧迫感を、無視できなくなって。    きゅう、と後ろに力が入ってしまい、四ノ宮の指の太さや長さ、輪郭を、つぶさに感じとる。

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