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10:すでにトロトロ

「……っぁ、あ、嘘、うそだぁ……ッ」 「ちゃんと、ずっぽり入ってますね」  あざけるように言いながら、指をぐるりとまわして、ナカを拡げるように折り曲げる。    くち、と、下着の中からいやらしい音がして、それはゆっくりと、内壁をかきわけ、粘膜をこすり、動き出す。 「……もっとたくさん、気持ち良くなりましょうね」  耳の後ろに、柔らかな唇を押さえつけて。    四ノ宮が、悪魔みたいに囁いた。 ──そこからは、もう、快楽だけが溢れて。  前と後ろ、どちらも同時にいじめ抜かれたら、内ももがブルブル壊れたみたいに痙攣して、俺の口からはひっきりなしに甘い声だけが飛び出した。   「……とろっとろだ。もう指、三本飲み込んでますよ、おいしそうに」 「っあ、ぁあぅ……ッ、だめ、だめっ」 「だめ……? どうしてです? ちゃんと気持ちよくなれて、えらいですね」  吐息のまざった、いやらしく笑うような声。  後ろから伸びた二本の手の先に、視線が釘付けになる。    自身はもう浅ましいほどの愛液でテラテラと四ノ宮の手を汚して、もう片方はそのもっと奥に伸びて、前後に動いてるのが見える。  動くたびに、くちくち、ズボズボ音がして。  自分の腹筋が、震えて、時おり大きく跳ねる。    涙でかすむ視界に、ひたすら現実離れした光景が繰り広げられる。 「ッあぁ、あぁぁ゙……っ、四ノ宮、しのみやぁ……っ、!」 「……っ、はい……。いますよ、ちゃんと」  背を仰け反らせ、やつの胸元に後頭部をぐりぐり押さえつける。  手探りで、しがみつくように掴んだ肩は、痩せているが骨がしっかりしていて熱かった。    脱力して姿勢を保てない俺の背中に、熱がこもって、あつい。  服越しに、四ノ宮の高い体温が伝わる。    今でこんなだったら、もし、直接肌が合わさったなら……どんな気持ちなんだろう……って。    ぼんやりとした思考、だけど身体は絶え間なく続く快美に、身を委ねていたら──。  ぐりぃ、とナカの指が、ある一点をえぐって、 「っひぁぁあ゙ッ! あっ、そこ、そこ……っ、やだあぁぁ……っ」  「……少し上のほうにあるんですね、九重さんのイイところ。時間かかっちゃいました」 「はっ、はあぁぁぅ……ッ、なに、そこ、はぅっ、なにっ、だめ、だめぇ……ッ」 「ナカ、やっとふっくらしてきましたね」  何かが、奥からじわりと溢れだしてしまいそうな感覚が、腰全体に広がる。    苦痛と快楽の狭間の、強い電流のような。  でも、癖になりそうな痺れが、疼いて疼いて仕方なかったナカを、どうしてほしいか分からなかった切ない焦燥感を、上書きするように満たす。   「やぁっ、やだ、やだ……っ、こわい、それ、変に、なる……ぅ、んぁあ゙……ッ!」 「もっと変になって? えっちで、気持ちのいいことだけ、考えていいんですよ」 「あぁぁ、あぅん……ッん、あ、うあぁ゙ん……ッ」  すでにほとんど泣きながら、下着の中でぐちゃぐちゃになっているそこに手を伸ばす。  指が長くて大きな手は、細いのに骨々しくて、ゴツゴツしている。    やっぱりちゃんと男の手だなって、思う。今さら嫌悪感なんて、ない。

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