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第13話

「うぐっ……ぐすっ」  呻き声が裏通りの公園に響いた。 「はい」  涙と鼻水で顔面崩壊している俺にポケットティッシュを差し出したのは無表情の二之宮だ。俺はティッシュで盛大に鼻を擤んだ。  錆びたベンチに俺と二之宮、そして白井が並んで座っている。白井の前で泣き顔を見せるのは死んでも嫌だったが、意気消沈する白井に見栄を張るのも馬鹿らしく、俺はお構いなしに嘆いた。 白井はベンチの背に頭を預け、青白い顔を浮かべたまま、生気を失った瞳で虚空を見つめている。一つ前のリプレイで、気絶したのか、死亡したのか、俺には判断がつかないが、強烈な衝撃は白井の精神をここではない何処かに弾き飛ばしたようだ。 「良かったじゃないか。幸せそうで」  二之宮が静かに告げた。 「うぐぅん」  喫茶店から出てきた野田と能瀬を思い出す。照れ臭そうに二人は手を繋いで、映画館へ消えた。俺達はそれを物陰から見守っていた。 「能瀬が……笑っていたから、いいんだ。そう、これで良いんだ。でも悲しいよおぉぉぉ」  恥も外聞もかなぐり捨てて、わんわん泣いた。失恋の悲しみの方が胸を大きく占めている。涙を手の甲で拭うが、それでも次から次へと涙が溢れ出てくる。これは立ち直るまでしばらくかかりそうだ。 「元気出しなよ、君は容姿に恵まれている。頭は単純だが馬鹿じゃない。すぐに良い人が見つかるよ」 「それ、慰めてるぅぅぅ?」  失った恋を嘆くのと同時にそれは鳴った。  ……ピピッ。

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