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 次の日。普通に出勤して着替えて小児科外来に行ったら、なんだかいつもよりざわざわしている。 「翠先生、凄いイメチェンじゃないですか~」 「どうしたんですか、心境の変化ですか?」 「もしかして!彼女が出来たとか!」 「まさか!翠先生が匠先生一筋なのはみんな知ってる事じゃないですか~。それじゃぁ、もしかして難攻不落だった匠先生が遂に…?」  こういうわけじゃないかと、看護師たちの質問攻めに、みーちゃんは何から答えればいいんだかオロオロしてるじゃねーか。婦長、こんな時こそ静かにって叱って…あぁ、いないのか…。 「おはようみんな。みーちゃん困ってるじゃねーか」 「おはようございます。匠先生!急にみーちゃんとか呼ぶってことは!もしかしてもしかするんですね?!」 「はっ?昨日ここに赴任してきたみーちゃんは、俺の幼なじみなんだから、みんな親切によろしくな」 「昨日?翠先生と匠先生って同期じゃ…」 「そういう事なんで。……じゃぁ行こうかたくちゃん」  余計意味がわからなくなったみたいな看護師たちが、「どういうこと~!」「にしてもカッコよすぎるわ」「目の保養ね」「二人並ぶとお似合いすぎる~~!」それぞれ思った事を口にしてるのが聞こえてくる。  こちとら一部記憶喪失で急に昨日になってみーちゃんの事思い出したなんて自分でも信じられないくらいだから、説明が難しい。  難しいので、周囲には勝手に察してもらおう。俺はみーちゃんとの距離感やら、真面目に付き合うということで悩んでて、周りの対応までしている場合ではない。とりあえず、今朝もそろそろ小児科の診察が始まる時間がやってくる。仕事中はいったん考えずに患者さんと向き合おう。

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