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小児病棟にて
午後はいつもの小児病棟の方の診察。
いつもは別々に、廊下の反対側から診ていく診察。
今日は、ちょっと離れがたくて一緒に病棟を回ったんだ。
子供たちの驚いた声と嬉しそうな声といったら。幸せ気分だった俺の心が、更に幸せになった。
「わぁ、みどり先生、たくみ先生、今日は二人で診てくれるの?」
「先生たち一緒にきてくれるの初めてだね!」
「たくちゃん先生、診察終わったら遊んでよ~」
「先生たちなんかいいことあったの?いつも優しいけど、今日はもっとニコニコしてる!」
「みどり先生髪切ってイケメーン」
「みどり先生彼女できたの?」
子供は案外鋭い。いつもと違う行動をした俺たちは子供の格好の的。質問攻めにあった。
確かにね、入院生活っていう退屈で、時には採血だの痛い事もあるけど代わり映えしない毎日で、興味をひかれるのは遊んでくれそうなお医者さんたちや、かけてある映画、図書コーナー、そのくらいのものだ。
おもちゃコーナーは小さい子向けだから、大きい子達が騒ぐ場所ではない。
そうなると、髪を切ってすっかりシッカリとイケメンになった翠先生は、からかう対象としてうってつけ。
みーちゃん優しいから、子どもたちの興味をひくのが上手くて、診察する表情も優しいんだな~と、今日の発見。
一緒に入った同期とはいえ、いつも個別で診察してるから、相手がどんな風に子どもたちと接してるかなんて見た事がなかった。
ふぅん、みーちゃんてこんな風に笑って子供たち安心させるんだ……泣いて不安になってる子には頭や肩を軽くポンポンしてる。
さっきまで俺に触れてた手なのに……子供に、患者にヤキモチやいてる場合じゃない!ビックリした~、自分の考えにビックリしたよ。
俺って実は独占欲強いのかな。そんな自分知らなかったよ。みーちゃんだからか?
「たくみ先生百面相してる~、おもしろーい。けほっけほっ」
「あぁ、夢、またはしゃぎすぎると発作が起きるかもしれないから静かにして」
「夢ちゃんのお母さん、大丈夫ですよ。夢ちゃんが今くらいはしゃいだところで発作は起きません。季節の変わり目とか低気圧の時に注意してあげてください」
「そうなんですか…。どうしても発作を見てから心配で…」
「そうですよね。心配だから僕たちがいるんです。遠慮なくナースコールして下さいね」
「はい、ありがとうございます」
みーちゃんてば、患者の保護者にまで親切!おもしろくなーい、と思いつつも俺でも同じ返答するよな。
子供たちのいい笑顔も見れたし、みーちゃんの仕事ぶりも見られたし、たまには一緒に回るのも良いかもな。
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