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悠仁先生の診察室
こちら心療内科医の佐々木悠仁。俺が勤めているこの病院では、ちょっとした名物になっているカップルがいる。共依存が過ぎるので、同僚のよしみで今日はそいつらのカウンセリングをしてみようと思う。
患者1 橋本匠
「どうも。なんで俺悠仁先生のカウンセリングルームに呼ばれたんすか?全然心当たりないんですけど」
「あ~、元気か?」
「元気ですよ?今日もお昼に翠にメッセージくれたんだから隣の宿直室にいましたよね?俺元気なの知ってますよね?」
「あぁ、知ってる。唐突に聞くがお前、翠といて疲れねぇのか」
「あっ、心配してくれてたんですね」
「まぁな。あいつの束縛、独占欲病的だろ?たまには可愛い後輩のカウンセリングしてやろうと思ってな」
「意外と優しいんですね。翠の独占欲はすごく心地好いですよ」
やっぱりか…
「翠って、理想的な恋人ですよね。悠仁先生もそう思いませんか?一緒に住んでるのに、診察終わるとすぐ、俺の診察室にとんできてくれるんですよ?俺なしじゃ生きていけないんですよ?安心感与えてくれますよね~。あの小さかったみーちゃんがですよ?初対面俺が女の子と間違うほどに可愛かったみーちゃんが今は頼れる恋人だなんて…人生って分からないもんですよね。翠って昔喘息で(長い語りに入ってしまったので以下略)」
「そうか…。で、お前さぁ、今はそれでいいかもしれないけど、翠が万が一お前に飽きたらどうするんだ?翠なしじゃいられなくなってるのお前もじゃないのか?」
「俺?そうですね、翠以外考えられませんね。ふふふ、こないだ翠の方から俺に飽きることなんてないって言ってくれたんで、大丈夫じゃないかな…って」
なんか疲れてきた。ただのノロケを聞いてる気分だ。好奇心から…いやいや依存が過ぎるように見えるから一応してカウンセリングしとこうと思ったんだが疲れる…。
「ねぇ、悠仁先生。俺達の仮眠室盗聴してません?」
なんだ?匠の雰囲気が妖しくなってきた。
「いっつも絶妙なタイミングでメッセージくれますもんね。おかしいと思ってたんですよね」
「あっ、あぁ、翠に仕事行かせるのに便利だろ」
「じゃぁ、俺のエッチな声も聞こえちゃってますよね?それは止めないんですね?」
「時間がある時は別にいいと思ってる」
「俺の声で勃ったことないんですか?ねぇ、悠仁先生…」
なんでこんな妖艶さだしてきてんだよ。こういう共依存的なものは、薬ではなくカウンセリングが大事なのに、俺が雰囲気にのまれてどうする。おい、なんで前屈みに近づいてくるんだ。お前シャツのボタン開けすぎだ……待て…待てって!
「なんてね。そろそろ翠がお腹すかせて待ってるんで行きますね。俺いないと昼飯食べないんすよ。可愛いでしょ。とりあえずはご心配ありがとうございます。では」
危なかった…。あいつのペースに持ってかれた。こっちが主導権握る側なのに。あいつ、なんとも思ってない男にはあんな事出来んのか…危険だ。
患者1 橋本匠 要経過観察
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