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 患者3 翠・フォースター 「せっかく仕事終わってたくちゃんと帰れるはずだったのに、何ですか悠仁先生。たくちゃん待たせてるんで、手短にして下さいね」  にっこり笑いながらも有無を言わせない言葉。匠が絡むと翠は揺るがない。もうこいつの話は聞かなくてもいい気がしたんだが、流れで呼んでしまっただけだ。 「あー、率直に言うけどお前、匠に依存しすぎだ。今の状態で匠がいなくなったら辛くなるのはお前だからな。依存し過ぎるな」  もう、匠バカのこいつには直球だ。 「なんですか悠仁先生。もしかしてたくちゃん狙ってるんですか?」 「まさか。心療内科医として心配してるんだ。人間何があるかわからない。急に事故にあうことも……」  なんだ?無駄に整った顔で、口の前に1本指を立て、シー。静かにしろって? 「そう、そんなこともありますよね。もし、事故でたくちゃんが死んでしまったら。そんな時の事も一応考えてみました。考えて考えて、その時は俺も死ぬときだと思いました。分かってます、何も言わないで下さい。医者として自ら死を選ぶ…それが良くない事なのは分かってます。でもたくちゃんいない人生…そんなものは生きてる意味がないんです。あれは…幼い時の事でした。まだ二人とも自我がないような頃。俺を見たたくちゃんが、えっ、可愛い…って呟いたらしいんです!その日から俺たちは一緒でした。身体が弱くてあまり外で遊んでなかった俺に初めて出来たお友達、それがたくちゃんです!たくちゃんは俺が寝込んでる時も一緒にいてくれました。一緒にいる間に、俺が具合は悪くなる時一番に気づいてくれるのは母親ではなくたくちゃんになりました。そんなの、愛がなければ気づきませんよね?!あぁ、悠仁先生ちょっと水下さい。今だってそうです。口は悪くなったけど、少し困ってることがあったり、疲れてることに気づいてくれるのはたくちゃんなんです!あっ、ありがとうございます。ちょっと飲みますね。  それから…(夜の営みのことを話し出したので割愛)」  顔面偏差値高くて、束縛野郎の翠。そんな翠を理想の恋人だと思ってる匠…か。あの研修医は放っておいても大丈夫だろう。 「翠。匠待たせてんだろ、お疲れさん」 「ああ!そうだ!愛しのたくちゃん!悠仁先生お疲れ様でした!」  疲れた……途中からあまり覚えてねぇな。  患者3 翠・フォスター …お幸せにな  fin

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