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第15話疲れた体で思うのは……
「あれ?お前なんでここにいるんだ」
「あー……まぁ色々あって」
娼館の一階、ジュリがダイニングルームで朝食をとっていると店に出勤してきたオーナーが驚いた表情でジュリの顔を見た。それもそうだろう、ジュリが王宮に行くと決めた日、マーリンとレミウスはオーナーにジュリの男娼の仕事を無期限での休職を願い出たのだ。
ジュリはこの娼館の1番の稼ぎ頭。急な話にもちろんオーナーは拒否したが、レミウスが家が一軒建つほどの大金を渡した事であっけなく休職の許可が出たのだった。
「なんだ、てっきり王宮の誰かの愛人になったと思ってたよ」
「はは、なに言ってんの……。愛人だったら休職じゃなくて退職でしょ」
そう言いながら、焼き立てのロールパンをかじりコップに入った牛乳を勢いよく飲み干す。
ぷはー、と声に出すとドンとコップを机に置いた。
「今夜から、復職って事でいい?」
「あ、あぁもちろん今夜からよろしく頼むよ!」
その返事を聞くと、ジュリはコクンと一度頷き、無言で2階にある自室に向かったのだった。
「あー……疲れた。もう限界」
部屋につくなり、バタンとベッドになだれ込む。
王宮を出た後、帰る足がなかったジュリは娼館までふらふらになりながら、2時間かけて帰ったのだった。
元々オメガは体のつくりもアルファやベータに比べると弱い。
ジュリも例外ではなく少し運動しただけですぐ寝込んでしまう体質なのだ。
「夕方まで寝よ。……あっ忘れてた。薬、飲まないと」
ベッドに寝ころび、チェストまで腕を伸ばし薬をとる。
その時、家に持ち帰り忘れた金平糖が視線に入った。
思わずそれも手に取り、箱から開けると一つ口に入れた。
「甘い……」
これを渡してきたのはマーだリンとレミウスなのにジュリの頭に思い浮かぶのは勇者・ショウの温かい手の感触だった。
「あったかくて優しい手……気持ちよかった」
もう会うことはないショウの事を思いながら、ジュリは固いベッドに身を委ねるとあっという間に深い眠りについたのだった。
ー---
「おい!ジュリ起きろ!」
部屋のドアをドンドン叩く音が聞こえ、ジュリは飛び起きた。
オーナーの焦るような声にジュリは寝坊したと思いベッドサイドに置いてある時計を見る。
午後3時。客を取るには早すぎる時間だ。
まだ、寝たかったのに、とどうしてもため息をついてしまう。
「はーい。今行く」
ジュリは声をかけると、大きなあくびをしながらベッドから降りる。
裸足のまま急ぎ足でドアを開けると真剣な顔をしたオーナーが立っていた。
「オーナー、なに?まだ時間……」
「ジュリ!お客さんだ」
オーナーが後ろにいた”客”に会釈した後、ドアの前からどいた。
「え……?勇者、様……」
そこには腕いっぱいに金平糖のお菓子を抱えた勇者が立っていた。
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